万年時計
江戸時代の天才が生んだ驚異の時計
(2005年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集
後世に残すべき映像……言うことなし
20年前のドキュメンタリー作品で、数年前に『プレミアムカフェ』で再放送されたものだが、永らく録画したまま放置という状態だった。今回、とうとう意を決して見てみた。
このドキュメンタリーで2005年の愛知万博(「愛・地球博」……すでに存在すら忘れていた)が話題になっていることからわかるように、そもそもが古い話である。何でも、東京国立博物館に収蔵されている「万年時計」のレプリカが作成されて、愛知万博に出展されることになったらしい。結構大がかりなプロジェクトで、いろいろな分野の専門家が集まって5カ月かけて復元するという企画である。

面白いプロジェクトではあるが、どこから資金が出たのかよくわからないようなバブリーな印象を受ける(実際は文部科学省から出ていたようだ〈「万年時計復元・複製プロジェクト」〉)。ちなみに「万年時計」というのは、江戸後期、多数のからくり人間を作って世間を驚かしていた田中久重(通称「からくり儀右衛門」)が作り上げた置き時計で、天象儀(毎日の月と太陽の動きを示すもの)、和時計、洋時計が付いている他、二十四節気や十干十二支、曜日まで表示するようにできていて、なおかつ一度ぜんまいを巻いたら1年間稼動し続けるというとんでもない代物である。

ともかく、この「万年時計」の内部構造をセイコーの技術者たちが調べ上げて、部品を再現し、レプリカを作るというプロジェクトなんだが、その模様を映像に収め、しかも内部構造をCGで再現して作り上げられたのがこのドキュメンタリーということになる。「万年時計」もすごいが、このドキュメンタリーも相当手が込んでいて、映像がなかなかすごい。内部の構造が映像上でわかりやすく再現されており、通常であれば複雑きわまりなく素人からは見当も付かないような特殊なギア構造まで映像化されている。「万年時計」もだが、このドキュメンタリーの映像も後世に残しておくべきと感じる。重要な資料になっており、文句の付けようもない。素晴らしい記録映像である。
★★★★参考:
竹林軒出張所『大江戸テクノロジー事情(本)』竹林軒出張所『独立時計師たちの小宇宙(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『時をつくる(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『古代ギリシャの"コンピューター"(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『偏屈のすすめ。(本)』