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竹林軒出張所

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『あなたの顔は大丈夫?』(ドキュメンタリー)

あなたの顔は大丈夫?
最先端“顔認証システム”が危うい

(2023年・仏France 24)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

SNSとインターネットの危険性に思いを馳せる

『あなたの顔は大丈夫?』(ドキュメンタリー)_b0189364_08390255.jpg 米国、マイアミの警察では、犯罪の容疑者を特定するために顔認証システムを利用している。これは、防犯カメラに映った映像から犯人の顔を割り出し、それを、インターネットから収集した膨大な画像データベースと比較照合して、類似の画像データを取り出し犯人の身元を特定するというシステムで、Clearview.AIという企業が提供している。
 このシステムは、凶悪犯人を素早く特定できるという点では素晴らしいもののように思えるが(Clearview.AIのCEO、ホアン・トン・タットも同様の主張をしている)、実際には合法的なデモの参加者を特定するために利用されたりする懸念があり(実際に利用されているが)、その問題性は大きい。しかもインターネットに公開されているデータに照合するだけとClearview.AI側は主張しているが、実際には削除されてネット上から消えているデータもClearview.AI側のデータベースには保存されているらしく、過去の大量の顔画像が蓄積されているというのが実情である。
 Clearview.AIは、さまざまな行政組織にこのシステムを売り込んでいるが、その対象となる行政組織には(UAE政府などの)反民主主義的な機関もあり、そこでは政権に批判的な活動、主張をするだけで身元が特定されるというような使われ方をしている。実際にClearview.AIにはそういう要素があり、同社でもそういう利用方法を主眼に置いているフシがある。
『あなたの顔は大丈夫?』(ドキュメンタリー)_b0189364_08390688.jpg こういった利用方法は、少なくともEU諸国では禁止されており、倫理的に考えても到底受け入れることはできない。市民のすべての活動が常時監視されているようなもので、収容所社会を実現するシステムと言っても過言ではない。なお、CEOのホアン・トン・タットはトランプを中心とする白人至上主義者と近いということもこのドキュメンタリーで明かされており、Clearview.AIの危険性はその点でも注目に値する。とは言っても、Clearview.AIの活動を禁止したところで、この手の事業は今後もどこかがやるのは目に見えているわけで、それを考えると、エマニュエル・トッドがその著書『西洋の敗北』で語っていた「インターネットは、アメリカの当局が世界中の人々のプライバシーを収集するためのツールに成り下がっている」という主張が、現実味を帯びてくる。結局のところ、安易に写真をインターネットやSNSで公開するなというところに落ち着く。と言ってもほとんどの人は、すでに取り返しがつかない状態になっているわけだが。SNSをはじめとするインターネットは、非常に危険であるとだけ肝に銘じておきたいものだ。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『中国 デジタル統治の内側で(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『完全密着 消えた物証を追え(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『強いられた沈黙 前・後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あなたの健康データは大丈夫か(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『西洋の敗北(本)』

by chikurinken | 2025-02-19 07:38 | ドキュメンタリー
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