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竹林軒出張所

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『禁じられたモスクワ』(ドキュメンタリー)

禁じられたモスクワ
経済制裁下の市民生活

(2024年・仏Tony Comiti productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

戦時下の社会状況を垣間見る

『禁じられたモスクワ』(ドキュメンタリー)_b0189364_08194376.jpeg ウクライナ侵攻の結果、ロシアは西側諸国から厳しい経済制裁を受けているが、ロシア国内の様子がどうなっているのかは外の世界からはよくわからず、大変興味深いところである。そこでモスクワに実際に入って、現地の状況をレポートしようという意図で作られたのがこのドキュメンタリーである。
 このドキュメンタリーに出てくる人々は、金持ち階級の人が多いようで、庶民の実情とは少し乖離しているかも知れないという思いを持ちつつ見ていたが、実際のところ、ソ連崩壊前後のように、著しく生活に困っているという様子はないようで、そのあたりはやや拍子抜けした。これは、物資がトルコなどのロシアの友好国を通じて入ってくるためで、もちろん価格はかなり高くなっているが、多くのものがいまだに入手できるようである。スーパーマーケットの様子なども出てきたが、物自体は揃っているという印象だった。
 西側のブランド店はその多くが撤退しているが、テナントについてはまだそのまま残っているところもある。終戦後に再びロシアに戻ってくる算段なのだろう。撤退したファストフード店の後にはロシア資本の(同様の名前とロゴを使った)ファストフード店が出ていてそれなりに繁盛している。どことなく隣国を思わせる。
『禁じられたモスクワ』(ドキュメンタリー)_b0189364_08194807.jpeg 一方で、国内でテロが起こったり、兵士として駆り出され戻ってこない戦争犠牲者が現れたりという現実もあり、戦時下であることは意識せざるを得ないようである。このドキュメンタリーの取材が2024年初頭のようで、あれから戦況と経済状況はロシアにとってさらに悪化していることが推測される。現在の状況は幾分変わっているのではないかと思われるが(バターが不足しバター強盗が発生しているなどという話も聞く)、それについても詳細に知りたいものである。いずれにしても、こういう素の姿を報告するという企画は、非常に有意義だと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『インサイド・ロシア(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチン政権と闘う女性たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンと西側諸国(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンと西側諸国 (4)〜(5)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『西洋の敗北(本)』
竹林軒出張所『第三次世界大戦はもう始まっている(本)』
竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 21(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『1942 大日本帝国の分岐点(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『1943 国家総力戦の真実(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『1944 絶望の空の下で(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2025-02-12 07:19 | ドキュメンタリー
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