ナイルの水は誰のものか
〜国境を越えるパワーゲーム〜
(2023年・仏ARTE G.E.I.E./MAGNET PRESS)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
大河を巡る争いの一例
アフリカのナイル川は10カ国を流れる大河であるが、青ナイルと呼ばれる支流の上流が通るエチオピアで、大エチオピア・ルネサンスダムと呼ばれるダム建設が進められている。エチオピアとしては国の威信をかけた大事業らしく、エネルギー確保のためにも何とか実現したいプロジェクトであるらしい。
これに待ったをかけたのがナイル川の下流域に位置するエジプトで、上流で大量に取水されたら下流で水が確保できなくなると主張し、同じく下流域にあるスーダンと協調してエチオピアに圧力をかけているというのだ。エジプトはアフリカの軍事・経済大国であり、エチオピアの隣国、スーダンで合同軍事演習を行うなど、相当威圧的に振る舞っている。

第三者から見れば、他国に迷惑をかけるようなプロジェクトはやめたら良いのではなどと考えてしまうが、エジプトだってアスワンダム、アスワンハイダムみたいなダムを築いてそれで経済を潤わせているのだから、エチオピアだって有効利用して良かろうという理屈のようだ。また水を溜めるのも水量の多い時期に集中的に行うと主張しており、彼らによれば下流域に問題が起こることはないということらしい。もっとも、下流域の国がそのことを管理したり介入できるわけでなく、しかもエチオピアでは政情が不安定と来ているため、エジプトの不安は尽きないのである。何よりUAEがエジプトに乗り出して水道事業を推進しており、そのためにも取水に支障を来したくないという本音が、エジプトとUAEの両者にあるようで、結局のところ、それぞれの国の利害のぶつかり合いというあたりに落ち着くようである。エジプトとエチオピアは、国際会議の席上でも、このダムについてそれぞれに主張を行っており、決着はなかなか付きそうにない。そういう現状を報告するドキュメンタリーである。
何とか解決策を見つけて仲良くやってくれよと思うが、社会正義云々というような話でもないし、結局は、我々にとってよそ事でしかないというところに落ち着くのだった。
★★★参考:
竹林軒出張所『ネットが革命を起こした(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『よみがえる悪夢 1973年(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『スエズ運河(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『メイド イン エチオピア(ドキュメンタリー)』