日曜劇場 サハリンの薔薇(1991年・北海道放送)
脚本:市川森一
演出:長沼修
音楽:小林靖宏
出演:役所広司、マリーナ・ウィヤキナ、那須佐代子、ブライアン・マチ・ユル、ミハエル・マーリシュヴァ、ガリーナ・マーリシュヴァ
『ワーニャ伯父さん』とシンクロしている……
のかな…… 北海道放送製作の日曜劇場でありながら、サハリンのユジノサハリンスクでロケを敢行した大作。なんでも北海道放送創立40周年記念作品ということらしい。
密かに妻を安楽死させた医師、矢吹(役所広司)が、生前妻と訪れることを約束していたサハリンを訪れ、滞在先のホテルでウェイトレスをやっている現地の女優志望の若い女、マーシャ(マリーナ・ウィヤキナ)と出会う。矢吹は、かつてチェーホフの『ワーニャ伯父さん』を舞台で演じたことがあるほどチェーホフ好きで、ロシア語はからっきしだが『ワーニャ伯父さん』のセリフであればロシア語で語ることができる。マーシャの方も、俳優志望だけに『ワーニャ伯父さん』関連で意気投合し、2人が関わり合うようになる。
矢吹の方はずっと葛藤を抱えたままで、一方のマーシャもオーディションに落ちたりして失意に沈むが、やがて矢吹はマーシャの身体の異変に気づき精密検査をするよう、知人の医師に頼み込む。マーシャは白血病であることが判明するが、治療のために必要な薬剤が現地ではなかなか調達できないと言われる。そこで矢吹は、その薬剤を日本から送ることを約束して帰国する覚悟を決めるというようなストーリー。
随所に『ワーニャ伯父さん』のセリフが出てきて、矢吹とマーシャの関係もどこか『ワーニャ伯父さん』風に進むんだかどうだか、この小説を読んでいないためよくわからないが、多分シンクロしているんだろう。そのあたりがこの話のスパイスになっているのではないかと思う。
製作者側の力がかなり入っているドラマで、さすがに記念作品だと思わせるが、全体的に少し詰め込みすぎのような印象もある。そのために、終わりの方でストーリーが唐突に完結するような印象も受ける。ただ役所広司がさりげなく演じているため、それが自然な印象を与え、ゆったり見ることができる点は評価に値する。東芝日曜劇場としては、秀作の部類に入ると思う。
第7回文化庁芸術作品賞受賞、第29回ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 春のささやき(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 林で書いた詩(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 ダイヤモンドのふる街(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 天使を乗せたタクシー(ドラマ)』竹林軒出張所『私が愛したウルトラセブン(ドラマ)』竹林軒出張所『グッドバイ・ママ (1)〜(11)(ドラマ)』『日曜劇場 サハリンの薔薇』ED主題曲