日曜劇場 雪の城(1967年・北海道放送)
脚本:矢代静一
演出:甫喜本宏
出演:三上真一郎、岩本多代、大坂志郎、垂水悟郎
ドキュメンタリー風に作っているが
ドラマ性がなく面白味もない 1965年に北海道大学山岳部の学生たちが雪崩に遭い遭難した。その際、リーダーだけが即死を免れ数日間生存したが、死ぬまでの間にしたためた遺書が後に発表され、それが方々で話題を呼んだらしい。このドラマもそれに触発されて作られた作品で、大学生の主人公が十勝岳に登ろうとするが雪崩事故に逢い、その現場に父親と恋人が駆けつけるというのがストーリーの全体である。
ドラマの中では、初対面の父親と恋人の間に何だか妙に不自然な葛藤が発生するが、話はそこまでで、物語としての大した盛り上がりもなく、結局そのままドラマは終わる。途中、遺書が主人公の声で読み上げられたりするが、当時の事故を知っている人ならいざ知らず、今見たところで絵空事にしか映らないため、まったく感慨が湧かない。残念ながら、盛り上がりも面白味も最後まで生じることはなく(父親の理不尽な差別意識は不快だが)、ドラマとしては失敗作と言わざるを得ない。
山の遭難自体、そもそもが創作の題材になりやすい素材であるため、ドラマや映画のみならず、ドキュメンタリーでも山での遭難事故を扱ったものが多く作られてきている。しかも今では、事故の当事者に密着した映像なども普通に撮影できドキュメンタリー映像で流されたりするため、作り事のドラマで同様のレベルの感慨を抱かせるには、登場人物の心情まで深く入り込まなければ無理で、残念ながら50年前のこのドラマではまったくそこまで届いていない上、事故周辺の状況もよく伝わってこない。タイトルの「雪の城」というのは、おそらく主人公が雪の中に閉ざされた状況を表したものなのだろうが、それすらストレートに伝わってこないという有り様で、残念ながら製作者の意欲だけが空回りしたようなドラマになってしまった。
★★☆参考:
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