光る君へ(2024年・NHK)
脚本:大石静
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう他
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、佐々木蔵之介、南沙良、岸谷五朗、国仲涼子、矢部太郎、信川清順、瀧内公美、段田安則、上地雄輔、井浦新、三浦翔平、竜星涼、秋山竜次、町田啓太、金田哲、渡辺大知、本田大輔、ユースケ・サンタマリア、吉田羊、本郷奏多、塩野瑛久、高畑充希、見上愛、ファーストサマーウイカ
時代考証がなかなか秀逸 NHK大河ドラマで平安貴族の時代が扱われると聞いて、はたしてドラマとして成立するのだろうかと思ったが、それなりには成立していた。何より時代考証がしっかり行われていて、当時の文化が割合うまく再現されていると感じた。このあたりは優れた点である。
ただ、ストーリー、特に紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)のロマンスのあたりが作りすぎでわざとらしく、ちょっと見てられないという箇所も多かった。しかも途中から(脚本家が飽きたのか知らないが)さらにあざとい方向にストーリーが流れていき、紫式部が刀伊の入寇に遭遇して、しかも懇意にしていた男が紫式部の命を守るために死ぬなど、もうあり得ない展開になってきて呆れてしまう。さすが大石静というシナリオである。
このようにストーリーには難があるものの、先ほども言ったように当時の風俗が再現されているのはポイントが高い。陣定(じんのさだめ)の様子や受領階級の生活様式、宮中での生活がかなり詳細に描かれ、もちろんこれがどの程度正確かはにわかに断定できないが、現在の学術レベルを反映したものになっているのではないかと思う。そのためあまり不自然さがなく、その点については非常に見どころが多かった。ただ『蜻蛉日記』が、辛い女性の声を代弁するために意識的にフィクション風に書かれたものだというような、強引な解釈をドラマの中で行っていたのはいかがなものかと思う。また、紫式部と清少納言が親しい間柄で始終行き来していたように描かれていたのもやり過ぎではないかと感じた。このあたりは脚本家のオリジナルの部分なんだろうが、風俗考証の部分と異なり安直さを感じられる部分であった。要は時代考証と歴史再現以外はあまり見どころがなかったということになるのか。
それに音楽もラフマニノフ風の大げさなものでかなりうるさく感じる。シナリオ、音楽、演出を含め、全体的に気合いが空回りしているようにも感じられた。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『源氏物語の時代(本)』竹林軒出張所『平安人の心で「源氏物語」を読む(本)』竹林軒出張所『私が源氏物語を書いたわけ(本)』竹林軒出張所『愛する源氏物語(本)』竹林軒出張所『げんじものがたり(本)』竹林軒出張所『源氏物語 (上)(中)(下)(本)』竹林軒出張所『あさきゆめみし完全版 (1)〜(10)(本)』竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 紫式部日記(本)』竹林軒出張所『源氏物語 浮舟(映画)』竹林軒出張所『新源氏物語(映画)』竹林軒出張所『百代の過客(本)』竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 蜻蛉日記(本)』竹林軒出張所『風と雲と虹と 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『草燃える 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『平清盛 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (2)〜(48)(ドラマ)』竹林軒出張所『太平記 (4)〜(27)(ドラマ)』竹林軒出張所『黄金の日々 (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『麒麟がくる』(6)〜(44)(ドラマ)』竹林軒出張所『どうする家康(ドラマ)』竹林軒出張所『花の生涯 (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『徳川慶喜 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『獅子の時代 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』竹林軒出張所『べらぼう 〜蔦重栄華乃夢噺〜 (1)(ドラマ)』