日曜劇場 旅ゆけば(1975年・北海道放送)
脚本:田中陽造
演出:長沼修
音楽:深町純
出演:堀内正美、鈴木ヒロミツ、坂口良子、梅津栄、岸田今日子
鈴木ヒロミツが「人間なんて」を熱唱 北海道放送製作の東芝日曜劇場。
マザコンのひ弱な男(堀内正美)が車で北海道を旅するが、そこでヒッピー風の男(鈴木ヒロミツ)に出会い、徐々に旅の計画が狂ってあらぬ方向に行ってしまうというような話。ストーリーはやや作りすぎで絵空事という印象で、あちこちに無理を感じる。
キャストはなかなか魅力的で、マザコン男の堀内正美、ヤクザなヒッピーの鈴木ヒロミツ、芯がしっかりした気の強い女子役の坂口良子と、どれもキャラクターによく合っている。かつて吉田拓郎がラジオで語ったところによると、(ミュージシャン仲間である)鈴木ヒロミツはかなり乱暴な男で、付き人にも頻繁に暴力をふるっていたということだが、ドラマの役もそれにかなり近い粗暴な性格で、素に近そうなイメージである。しかもドラマの中では吉田拓郎の歌(「人間なんて」)を熱唱するという、なかなか奮った演出もある。
また途中、北海道の大地をヒロミツと堀内正美が徒歩でさまようようなシーンがあったが、当時よく放映されていたモービル石油のコマーシャル(鈴木ヒロミツと仲間がさまよい歩くもので、「クルマはガソリンで動くのです」というフレーズが一世を風靡したやつ)を髣髴させるものだった。あのシーンも製作者が意図して撮ったのではないかと思う。
目に留まるような箇所もあるにはあったが、総じて可もなく不可もなくというようなドラマで、そういう点では東芝日曜劇場らしいドラマと言えるのかも知れない。
★★★参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 林で書いた詩(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 春のささやき(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 ダイヤモンドのふる街(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 天使を乗せたタクシー(ドラマ)』