プーチンの“オオカミ”たち
バルカン半島にくすぶる火種
(2023年・仏SlugNews)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
バルカン半島を火薬庫にしたい人々 セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナに存在する反イスラム・親ロシア勢力を取材したドキュメンタリー。
登場するのはナイト・ウルヴスというオートバイ集団で、見るからに暴力的な雰囲気を漂わせている一団。このナイト・ウルヴスの活動に密着して、彼らの背後にある考え方にアプローチしようとする。
彼らは、反イスラムの態度をあからさまにしており、イスラム系住民に対する敵意を示す。ボスニア・ヘルツェゴビナ内のセルビア人地域であるスルプスカ共和国の独立を画策しており、同時に親ロシア的な思想を持ち、プーチンに対しても親近感を持つ(というより崇拝に近い)。親露の保守的なセルビア正教会とも考え方が近く、セルビア国内の保守主義、排他主義を体現する存在である。
一方のロシアもこの地域に対して経済的・政治的な影響力を持っており、ガスプロム(ロシアの政府系エネルギー企業)がセルビアの国営エネルギー企業、NISを(超低価格で)買収して、同国のエネルギーを支配下に置いている(同国内の石油精製所も支配)。言わばこういう地域(セルビアやボスニア・ヘルツェゴビナ)もロシアの衛星国になりさがっているわけで、この地にはいまだにソ連時代の亡霊が残っているということもできる。そういう点でモルドバの沿ドニエストル共和国やジョージアのアブハジア自治共和国(
竹林軒出張所『未承認国家(ドキュメンタリー)』を参照)と同様の存在であり、強権ロシアが存在する限り存続する、しかもそれがバルカン半島地域の火種にもなっているという現実がある。
旧ユーゴスラビアの現状はなかなか日本に伝わってこないのが現状で、僕自身もこう言った状況についてほとんど知識がなかったが、プーチン・ロシアがこの地にも巧妙に網を張り巡らせていることが、このドキュメンタリーを通じてわかった。バルカン半島がいまだに火薬庫のままになっているのは、強権政治の存在と関係していたということもできそうである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『未承認国家(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ゆらぐモルドバ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『潜入 ベラルーシ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンと西側諸国(ドキュメンタリー)』