未承認国家
“親ロシア派”地域にくすぶる火種
(2023年・仏Ligne de Front)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
抑圧的なソ連の亡霊がくすぶり続ける ロシアの周辺国には、ロシア以外のほとんどの国が承認していない「国」がある。共通しているのは、どの「国」も、ソ連解体後に独立した旧ソ連独立国家の中にあり、しかもロシアがその地に軍を派遣してロシアの影響力を依然とどめながら独立を画策しているという点。言って見ればロシアが、傀儡政権を周辺国の中に作って、その周辺国に揺さぶりをかけているわけである。
ロシア側からすると、同地は親ロシアの地域で、それぞれの独立国家から圧力をかけられている親ロシア住民を保護するという名目があるわけだが、実際には、この方法論はロシアが(ソ連時代から)周辺国に勢力を拡大しようとするときに使う常套手段である。そのことは、今回のウクライナ侵攻に先だって行われたクリミア半島併合やウクライナ東部4州(ドネツク、ルガンスク、サボリージャ、ヘルソン)への軍事侵攻、その後のロシアによる住民投票、独立宣言の過程を見ればよくわかる。
このドキュメンタリーで紹介されるのは、このウクライナのケースの他、モルドバの沿ドニエストル共和国とジョージアのアブハジア自治共和国で、それぞれの地に実際に赴き、当地の状況が報告されている。共通しているのは、どの土地にも、ロシア風の武力主義的でマッチョな勢力が存在し、彼らの中にはともすればソ連時代を懐かしむという風潮が感じられる(このドキュメンタリーの映像から受ける印象である)。当然、その地域内にも「独立」に反対している人々もいるが、彼らに対しては全体主義的な圧力がかかっているようにも映る。
ソ連を懐かしむマッチョな方向性はロシアのプーチンと共通するものであり、プーチンがこういう「国」を支援し、独立を画策しているというのも納得がいく。こういう一国内に存在する独立「国」が正しいのかどうかにわかに判定できないが、多分に政治的に成立させられたような印象を受ける上、少なくともロシアの支援がなければ存続しえないのは確かである。プーチン・ロシアが崩壊したら、こういった地域の「独立」状態も終わるんじゃないかと感じたが、いずれにしても強権ロシアの存在が存続の鍵となっているのは確かである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ゆらぐモルドバ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンの“オオカミ”たち(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『潜入 ベラルーシ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンと西側諸国(ドキュメンタリー)』