調査報道・新世紀 File4
オンラインカジノ 底知れぬ闇
(2024年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル
ネットゲームと同じ感覚で接すると身の破滅 インターネットがあまりに身近になったため、従来であれば一般人の手の届かないような犯罪や博打でさえ身近になり、簡単に関われてしまうようになった。こういう状況は決して野放しにしておいて良いはずはないが、対策が打たれるまでの間に、それを金づるにする勢力とその犠牲者が大量に現れる。特にインターネットは変化があまりに急激で、無法地帯化が進んでいるため、実社会の方がそれについて行けていないように映る。そろそろインターネット自体の規制が必要な時期に来ているのではないかと感じてしまう。
このドキュメンタリーで取り上げられたオンラインカジノなどもまさしくその一例で、存在してはいけないものの1つである。ネット詐欺や特殊詐欺同様、被害者から金をむしり取るだけの目的で存在しているが、その問題性に対する認識が広く行き渡っていないことから世界中に業者が蔓延しているという状態になっている。
日本ではこの手のカジノは禁止されているが、国内で禁止されていても簡単に海外のサイトにアクセスできるのはインターネットならではで、そのために日本からも米国やモナコのカジノを利用することができる。一方でカジノなどの博打は、依存性がきわめて高く、一旦始めてしまうとやめられなくなるという特徴を持つらしい。カジノ業者側もそのあたりは巧妙で、新参者の顧客については最初勝たせて、その後、破産するまで限りなく金を搾り取るという手法を採る。被害者は世界中に広まっており、中には日本人をターゲットにしたサイトもあり、日本人ディーラーが画面に現れて接客するらしい。日本人が画面に現れてカジノ風の演出をやったみせたところで、画面の向こうでどのような操作が行われているかわからないわけであり、本来であればまったく信用に足るものではないのだが、賭けている側は、いつか勝つことを信じてどんどん金を注ぎ込んでしまうものであるらしい。実際に裏では恣意的な操作が行われていて、利用者は一方的に金を巻き上げられるだけなのである。
このドキュメンタリーでは、そういった現状が紹介されるだけでなく、実際にモナコにある日本人コミュニティに潜入して、オンラインカジノで働いている日本人たちにも接触し、カジノ業者の実態を探ろうとしている。実際には本丸まで迫ることはできていないが、カジノサイトの運営をウェブ製作業者みたいなところが行っており、多くの日本人がそこで雇用されて日本人向けのサイトが運用されているというところまでは判明した。
またオンラインカジノにはまって全財産を失った(挙げ句に家庭も崩壊しつつある)サラリーマンや、その救済活動を行っている市民にも密着する。こちらはNHKらしいアプローチである。
全体的にかなり力を込めて作ったドキュメンタリーという印象で、「調査報道」と名うっているだけのことはあると感じる。ここ数回放送された『NHKスペシャル』は内容が割合充実していて、見る価値のあるものが多かった。この10年で確立された『NHKスペシャル』のポンコツなイメージを払拭することができるか、今後に注目していきたいところである。それは行政によるインターネットカジノ対策(ひいてはインターネット規制)についても同様で、今後の行方に注目していきたいものだ。
★★★☆参考:
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