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竹林軒出張所

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『キイハンター』(1)、(2)(ドラマ)

キイハンター (1)(2)(1968年・TBS、東映)
原案:都筑道夫、河野典生
脚本:高久進、深作欣二、池田雄一
演出:深作欣二
音楽:菊池俊輔
出演:丹波哲郎、野際陽子、千葉真一、谷隼人、大川栄子、仲谷昇、室田日出男、八名信夫、岡田真澄

最初はモノクロだった

『キイハンター』(1)、(2)(ドラマ)_b0189364_09433202.jpg 『キイハンター』の第1話と第2話がYouTubeで公開されていたため、見てみた。
 『キイハンター』といえば、放送当時の人間にとっては土曜の夜のお楽しみで、アクション満載の「スパイ」ドラマだった。毎回のように、見たことのないガジェットやギミックが出てきて、しかも息をもつかせない派手なアクションが散りばめられているというドラマで、当時の視聴者にとってはたまらんものだった。僕自身も子ども時代にほぼ毎週見ていたが、初期の頃(68年頃)についてはあまり記憶がない。したがって「キイハンター」と呼ばれる主人公のグループがどういう組織なのか、彼らの活動に対してどこから資金が出ているのかなどは一切わからなかった。物語の中では国際犯罪の捜査を行っていたので、僕はてっきり警察関係の組織かと思っていたのだが、この第1話、第2話を見る限り、そういう組織でもなさそうなのだ。
 第1話の設定では、主人公の元諜報部員、黒木(丹波哲郎)がビルの一室に事務所を構え、そこに元新聞記者の風間(千葉真一)と自動車マニアの島(谷隼人)が詰めているという状態になっている(彼らは黒木のことを「ボス」と呼んでいる)。さらに言うと、この組織、ビルの家賃を滞納しつつあるため、持ち主のユミ(大川栄子)から支払を督促されているという設定になっているが、ここまではどういう組織かまったく見えてこない。何らかの収益が上がっているようにも見えない。
『キイハンター』(1)、(2)(ドラマ)_b0189364_09433808.jpg 第1話は、黒木が、かつての友人(彼も諜報部員)に関わるある犯罪を調べているときに(したがってこれはプライベートな調査)、謎の美女、津川(野際陽子)が介入してきて、なぜだかわからないが途中から仲間になって一緒に調査に当たるというストーリーになる。そしてこの5人がその後キイハンターのメンバーということになるわけ(なぜ大家がメンバーになっているのかはわからない)。60年代に流行っていた無国籍映画みたいな適当な設定という印象も受けるが、何でもこの後、このグループが国際警察の出先機関として認定され、これから後は、警察の一組織として活動することになるようだ、ウィキペディアによると。結局、第1話と第2話では、キイハンターがどういう組織かはわからなかった。
 あちこちにミステリー的な要素やアクションシーンが散りばめられているため、何も考えずに見ていれば楽しめるが、細かい部分がセリフで大雑把に紹介されるだけだったりして、ストーリーの背景は把握しづらい。要は、とりあえずあまり考えずに見ろやというドラマなんだろう。もっとも放送当時は見る側もそういう姿勢で見ていたわけで、とりあえず殴り合いやドンパチがあれば満足、何だったらセスナからぶら下がるみたいなアクションがあればなお良い……みたいなドラマだったと言える。とは言っても我々世代は、『キイハンター』の影響をかなり受けており、FBIだとかニトログリセリンだとかスペイン金貨だとか、わけもわからずこの番組経由で記憶していた用語は結構存在する。菊池俊輔の音楽も印象的で記憶に残っている。催眠術で主要メンバーが敵から操られるなどという設定もコーフンを誘うものであった。
『キイハンター』(1)、(2)(ドラマ)_b0189364_09434419.jpg 第1話は、設定がやや複雑でわかりづらい上、同時にやや安直さを感じるストーリーだった。第2話では、それなりにスリルとサスペンスが出てきて『キイハンター』らしくなるが、例によってご都合主義で適当にごまかしている箇所もあり、エンタテイメントで終始してしまうのが難点と言えば難点である(そのため主役級のメンバーが絶体絶命の危機に陥っても、何事もなかったかのように助かってしまったりする)。
 全編モノクロであり、またオープニング部分も、これまで見慣れているものと違っていた。主要メンバーは最初からほぼ出尽くしているが、翌年の放送から元FBI捜査官、吹雪(川口浩)が加わる。この吹雪が初めて登場する回については記憶があり、すでに見慣れたオープニングになっていたことから、それまでの間に変わったのだろうと思う。全体的にテレビドラマらしからぬ重厚さ、豪華さはあるが、何度も繰り返すようにご都合主義的なエンタテイメントの枠を出ることはないという印象である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『仁義なき戦い 広島死闘篇(映画)』
竹林軒出張所『仁義なき戦い(映画)』
竹林軒出張所『青春の門 (東映版)(映画)』
竹林軒出張所『トラ・トラ・トラ(映画)』
竹林軒出張所『女囚701号 さそり(映画)』
竹林軒出張所『君よ憤怒の河を渉れ(映画)』
竹林軒出張所『間諜X27(映画)』
竹林軒出張所『恐怖の報酬(映画)』
竹林軒出張所『ぼくらの60〜70年代熱中記(本)』
竹林軒出張所『吸血鬼ゴケミドロ(映画)』

by chikurinken | 2024-08-09 07:42 | ドラマ
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