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竹林軒出張所

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『盗撮・児童ポルノの闇』(ドキュメンタリー)

調査報道・新世紀 File3
子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇 前編
後編
(2024年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル

児童ポルノは個人の人生に深刻な影響を及ぼす

『盗撮・児童ポルノの闇』(ドキュメンタリー)_b0189364_09214384.jpg 犯罪的手法で子どもや未成年を撮影した性的な写真や動画がネットに広く出回っており、現在行政や立法でも問題視されているが、国内でのその現状を追ったのがこのドキュメンタリー。
 「調査報道」と名うったシリーズの1本で、今のNHKが「調査報道」を謳うことに幾分胡散臭さを感じたことから(しかも『NHKスペシャル』の枠であることだし)これまで見てこなかったが、このFile3については比較的しっかり「調査報道」できていたと感じる。ここ10年ほど、NHKには、報道機関であることをやめたかのような印象を受けていたが、そういった世間のイメージを払拭しようとしているのか、そのあたりはよくわからないが、結果的にそれなりのものに仕上がっている。ただ自ら「調査報道」と謳うことには相変わらず違和感を感じる。
『盗撮・児童ポルノの闇』(ドキュメンタリー)_b0189364_09214746.jpg 内容については、実際に児童ポルノ愛好者の集まりに潜入したり、ポルノ画像を配付するアプリの製作者に直撃したりということも行っており、「調査報道」という名に恥じないものにはなっている。特に児童ポルノがネットで広範に取引されている状況に加え、児童ポルノ収集者の依存症状や児童ポルノ愛好家を生み出す背景になっている社会思想などにも踏み込んでおり、問題点を広範な観点からあぶり出そうという姿勢が見える。ドキュメンタリーとしては十分及第点である。また、(児童ポルノの素材にされた)犠牲者のその後の人生に与える影響も取り上げられており、そのあたりも価値が高い。児童ポルノへの嗜好が、決して「個人の趣味」に落とし込むことができない側面があるのは明らかで、被害者からの観点は社会にどんどん知らせていかなければならない。
『盗撮・児童ポルノの闇』(ドキュメンタリー)_b0189364_09213595.jpg 被害者からの訴えは(日本の社会的な背景もあって)表に出にくい性質があるため、意識的に取り上げることが問題の解決の糸口になる。児童ポルノが個人の人生に深刻な影響を及ぼすことがわかれば、言い訳の利かない重罪であることが認識できるだろう。このような事実を広く知らしめるという点で、公共放送で放送する価値があるというものである。これは一種の啓蒙活動であり、報道機関は、この問題について今後も責任を持って社会に知らせていく必要があると思う。そういう点でも今回のこの「調査報道」は評価に値すると言えるだろう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『未成年の性被害(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スクールセクハラ(本)』
竹林軒出張所『裁判百年史ものがたり(本)』
竹林軒出張所『スポーツ界 性的虐待の闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ブラックボックス(本)』
竹林軒出張所『ハリウッド発 #MeToo(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『説教したがる男たち(本)』
竹林軒出張所『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い(本)』
竹林軒出張所『私のいない部屋(本)』
竹林軒出張所『SNS暴力(本)』
竹林軒出張所『オンラインカジノ 底知れぬ闇(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国・流出文書を追う(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『気候変動対策の“死角”(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2024-06-26 07:21 | ドキュメンタリー
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