ある愛の詩(1970年・米)
監督:アーサー・ヒラー
原作:エリック・シーガル
脚本:エリック・シーガル
音楽:フランシス・レイ
出演:ライアン・オニール、アリ・マッグロー、レイ・ミランド、ジョン・マーリー、トミー・リー・ジョーンズ
決して後悔しない映画……ですかね
1970年にヒットした映画で、恋人が若くして死んでしまうという、言ってみれば「恋愛死別もの」の代表作みたいな作品である。こういうストーリーのものは、日本を含む世界中でこれまで繰り返し作られていて、
『愛と死をみつめて』のように事実を基にしたものならいざ知らず、まったくのフィクションであれば結局「お涙ちょうだい」で終わってしまい、一種のカタルシスにはなるがそれだけというような作品になることが多い。
この『ある愛の詩』についても似たようなものだという認識があったために少し侮っていたが、全体的に実にシンプルにまとめられており、見る者を泣かせようとするような過剰な演出もなく、むしろ好感が持てる作品であった。また家族の問題や階級の問題まで織り込まれており、決して駄作として片付けられない。エンタテイメントだけの映画かと思っていたので、そのあたりはやや意外ではあった。
この映画が公開された後、1975年に日本でも「恋愛死別もの」の『赤い疑惑』(大映テレビ製作)が放送され、山口百恵が大ヒットするきっかけを作るが、恋人の死因も白血病で共通しているなど、多分にこの映画が意識されていたのではないかと思う。それを反映してか知らないが、日本のテレビでこの映画の吹き替え版が放送されたとき、主人公の二人は山口百恵と三浦友和が演じていた。声優としては2人とも冴えないものだったが、すでに『赤い疑惑』のイメージがあったため、別の思い入れが見る側に生じるという作用はあった。
なおこの作品、フランシス・レイの音楽がつとに有名で、今では音楽以外表に出てくることも少なくなったが、先ほども書いたようにそれなりに見どころはある。ただ日本語字幕版については、字幕のせいで意味不明になっている箇所がある。たとえば、テーマになっているフレーズ、「Love means never having to say you're sorry」が「愛とは決して後悔しないこと」と訳されているため、「I'm sorry.」(「残念だ」、「ごめんなさい」などの意味)の返しとしてこのセリフが使われている状況で字幕がうまく成立しなくなっていた。この会話は一種の洒落みたいなものだったため日本語に訳すことが難しい……というか不可能に近いため致し方ないことではあるが、この作品、全体的にセリフが奮っているんで、その魅力が損なわれることになるわけ。こういう状況が全編に渡って存在し、字幕の限界というものを感じることになるのだった。英語の音声だけで100%理解できれば、おそらくもっと楽しめるのではないかと感じた。そのあたりが少々惜しい点である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『愛と死をみつめて(映画)』竹林軒出張所『あっこと僕らが生きた夏(ドラマ)』竹林軒出張所『ペーパー・ムーン(映画)』竹林軒出張所『男と女(映画)』