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竹林軒出張所

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『明治日本写生帖』(本)

明治日本写生帖
フェリックス・レガメ著、林久美子訳
角川ソフィア文庫

明治中後期の日本の描写
そのため江戸情緒は少なくなった


『明治日本写生帖』(本)_b0189364_09005016.jpg 1976年(明治9年)にエミール・ギメとともに日本を訪れた画家、フェリックス・レガメの著書。
 とは言っても、1976年の来訪時の記録ではなく、1999年に再来日した後にその印象記として書かれ1905年頃に出版された本(『Le Japon en images』)が原著である。
 「政治と文明化」、「軍隊」、「宗教・風俗・慣習」、「音楽と踊り」、「芝居と相撲」、「公教育」、「芸術と芸術家」の6章立てで構成されており、各章で当時の日本のさまざまな事象について記述していく。総じて明治日本案内記みたいなものになっている。「公教育」、「芸術と芸術家」などという項があるのは、レガメの来日目的が「日本の美術教育視察」(フランス政府により派遣)だったことから納得できるところで、本書を通じ、広範囲に渡って当時の日本の社会や風俗、文化などを窺い知ることができる。当然レガメのスケッチや絵画も多数掲載されており、当時の雰囲気を今に伝える役割を果たしている。
 レガメ自身がかなりの日本びいきだったこともあり、全般的に日本礼賛記事が多く、ヨーロッパにない美術や文物についてはともかく、軍隊や教育に対してもベタ褒めしているのは行き過ぎであり、そういう箇所については疑問を感じる。レガメ自身が、フランスでパリ日仏協会の幹部を務めており、日本文化の紹介や礼賛を行っていた人であるため、それもわからなくはないが、(ヨーロッパのシステムをそのまま模倣していた)当時の明治日本が理想郷であるはずはなく、現代の視点から見るとやや的を外しているという印象を受ける。
 僕自身は1976年の来日時の記録が中心と思って本書に当たったのであるが、現実にはそれはまったく見当違いであって、そういう点で少し失望したが、レガメの絵画が非常に魅力的であるのは変わりない。当初期待していた江戸情緒が少なかったのが難点であるが、明治期の資料として接すればまあそれなりに楽しめる書である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『明治日本散策(本)』
竹林軒出張所『海を渡った600体の神仏(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新編 日本の面影(本)』
竹林軒出張所『ビゴーが見た日本人(本)』
竹林軒出張所『ワーグマン日本素描集(本)』
竹林軒出張所『英国人写真家の見た明治日本(本)』
竹林軒出張所『日本その日その日(本)』
竹林軒出張所『シュリーマン旅行記 清国・日本(本)』
竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語 前編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語 後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『100年前の世界一周(本)』
竹林軒出張所『美しき日本の面影(ドキュメンタリー)』
竹林軒『「ラスト・サムライ」に見る「逝きし世の面影」』

by chikurinken | 2024-05-29 07:00 |
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