シリーズ「21世紀の日本人へ」
農よ、自然に帰れ 〜自然農法実践家・福岡正信〜
(1997年・NHK)
NHK-教育 ETV特集
「自然農法」の番組は
どれもストレスフルで物足りない
愛媛県伊予市で、無農薬不耕起の自然農法を実践し、「人為を排除してすべてを自然に任せる農業」を提唱する福岡正信氏の話を訊くドキュメンタリー。1997年製作で(当然福岡氏の生前である)、NHKのディレクターが伊予市の自然農園を訪れ、福岡氏の話を直接聞き出したという作品である。
福岡正信氏であるが、80年代末にマグサイサイ賞を受賞したりしたこともあり、この頃NHKのドキュメンタリーでたびたび取り上げられており、彼の自然農法にも世間から注目が集まっていたと記憶している。僕がこの人を知ったのも90年代前半だったと思う。もちろんその分野の人々の間では著名な人で、そのために日本国内だけでなく世界中から多くの見学者、研修者が彼の農園に訪れていた。
実際、福岡氏の主張は「現代農業」を全否定するようなもので、自然の環境に任せておけば農業は概ねうまく行くのであるから、化学肥料や農薬は一切必要ないのだという議論である。それを伊予の地で実践しているというのだから一度は目にしたいと思う人がいてもそれは「自然」である。
こうして多くの人が福岡氏の主張に耳を傾け、あるいは現地に赴いて自身で体験した上で自ら実践する人もいたのだが、現実はなかなか思うように行かず、福岡氏の言うように粘土団子(さまざまな植物の種子を混ぜ込んだもの)を蒔きさえすれば、後は自然がすべてやってくれるというようなものでは必ずしもないのではないかと感じて挫折したりする。そのような人も少なからずいたようだ。

そういうことがあるので、福岡氏の実践例を詳細に見てみたいと僕自身は感じていたのである。ただ福岡氏を取り上げたテレビ番組は、そういう点でどれも中途半端なものばかりなのだ。このドキュメンタリーもご多分に漏れず、ほとんどが福岡氏の話を訊くという主旨であり、自然農園の様子をもっと見せてくれよと感じることしきりで、何とも物足りないものになっていた。そもそも正直福岡氏の主張であれば著書で存分に接することができるのであって、45分の映像を使って、これだけ詳細に取り上げる意味があるのかと思う。要は、要点だけで良いわけだ。福岡氏を扱ったドキュメンタリーはどれも同様で、こういったストレスが常に伴う。彼をドキュメンタリー番組で取り上げ話を訊いたという事実、そしてその態度は見上げたものだが、内容がこれでははなはだ物足りないと言わざるを得ない。
なお、この番組、今となってはかなり古いものだが、現在(24年5月)、
YouTubeで見ることができる(元々は45分番組だがYouTube映像は38分。多少端折られている)。
★★★☆参考:
竹林軒『福岡正信はこう語った』竹林軒出張所『ハッピーヒル(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『“マメの木”が森を救う!(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『未来の食卓(映画)』竹林軒出張所『遺伝子組み換え戦争(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『モンサントの世界戦略(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『フード・インク(映画)』竹林軒出張所『タネの未来(本)』竹林軒出張所『いのちの食べかた(映画)』竹林軒出張所『ありあまるごちそう(映画)』竹林軒出張所『食べものから学ぶ世界史(本)』竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』