兄弟 (1)、(2)(1969年・TBS)
脚本:山田太一
演出:木下恵介
出演:津坂匡章、あおい輝彦、秋山ゆり、沢田雅美、北村和夫、津島恵子、菅原謙次
DVDかサブスクで見たいものだ
TBSで放送された木下恵介アワーの中の1本で、山田太一が脚本を書いた作品。時期的には、
『3人家族』の後で、
『二人の世界』の前に当たる。つまり、『3人家族』→『兄弟』→『二人の世界』という順に製作されているわけだが、この3作、設定がどれもきわめてよく似ている。特に『3人家族』と『兄弟』は、ストーリーが酷似しており(主人公の家族構成以外ほぼ同じと言っても良いほど)、焼き直しと言われても文句を言えない。また出演俳優もあおい輝彦、沢田雅美、菅井きんが共通していて、おそらく『3人家族』の人気が高かったため、同じテイストのドラマをということで作られたのではないかと勝手に想像する。
主人公は、会社員の兄(津坂匡章)と大学生の弟(あおい輝彦)で、この二人の恋愛と家族が描かれる。兄は「一流大学を出て一流企業に入った」真面目人間、弟は「一流ではない大学」の学生で、自由気ままに生きている。父親(北村和夫)はいかにも昭和の男という権威主義的な頑固親父で、今見るとかなり不快な言動をかましてくると感じるが、昭和のドラマでは割合典型的な存在である。あるいは、このドラマの前に放送されていた『おやじ太鼓』を踏襲しているのかも知れない。それを考えると、この頃の木下恵介アワー、全体的にワンパターンで、ややマンネリ化していたのかも知れない。
ただドラマの内容は面白く、脚本が冴え渡っていて、まったく見飽きることがない。話をどんどん進めていくダイナミズムがある。もちろんテレビドラマであるため、ゆとりや遊びみたいなシーンもあるが、だからといって、そこでだれたり飽きたりさせることがないのはさすがである。むしろそういう部分に面白さを生み出す効果があったりする。

このドラマを見るのは今回二度目で20年ぶりぐらいになるが、前見たときは、兄のキャラクターがスカしていて少し受け付けないという印象があった。しかし、今回見た感じでは、悪くないキャラクターであると感じた。最初に見たとき、『俺たちの旅』でグズ六を演じていた秋野太作(津坂匡章)が、物静かなエリートの兄を演じていたことから違和感を持ったんだろうが、そういう偏見を排除して見れば実によくはまっていると感じる。弟のあおい輝彦の方は、『3人家族』同様、そのはじけぶりが大きな魅力になっていて、主人公2人のコントラストがこのドラマの見どころの1つになっている。またマドンナ役を秋山ゆり、沢田雅美という地味な女優が演じているのもリアリティがあって良い。若干の物足りなさはあるが。
今回、BS松竹東急で放送されたものを見たが、間に怪しげな健康食品の広告が頻繁に入るのがなんとも落ち着かない。ドラマとCMでテイストが急に変わって(CMが異様にハイテンション)毎回驚いてしまう。もちろんすぐに飛ばすようにしているが、中にはインデックスがちゃんと入っていない箇所もあって、結局妙なCMを見させられてしまうことがある。そのたびに少しうんざりして、こういうがなりたてるようなコマーシャルじゃなくてせめてもう少し控え目な映像にすべきじゃないのと感じる。ドラマが台無しになる上、コンテンツを見続ける気が一気に失せてしまうのである。YouTubeのCMにも共通することだが、無理やり見させられる映像は一種の暴力なのである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『「3人家族」と「二人の世界」(ドラマ)』竹林軒出張所『3人家族 (1)〜(13)(ドラマ)』竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1 続き(補足)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』『兄弟』OP主題曲