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竹林軒出張所

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『平泉 よみがえる黄金都市』(ドキュメンタリー)

平泉 よみがえる黄金都市
(2011年・NHK)
NHK-BSプレミアム プレミアムカフェ

オーソドックスで過不足のない構成・演出
金色堂の魅力が伝わってくる


『平泉 よみがえる黄金都市』(ドキュメンタリー)_b0189364_12054252.jpg 11世紀末から12世紀にかけて、東北一帯を支配した奥州藤原氏。その栄華を今に伝えるのが、平泉にある中尊寺金色堂である。金色堂は、昭和の修理を経て、現在ではオリジナルの姿(?)が再現されている。床にまで金箔が貼られている他、柱にも螺鈿細工が施されているといった凝りようである。その豪華きわまりない装飾を紹介し、奥州藤原氏の富の源泉が、奥州に眠る莫大な金と広範囲に渡る交易だったことを伝える文化ドキュメンタリーである。
 金色堂建立の背景から始まり、施されている装飾の細部を紹介して、奥州藤原氏の繁栄の源泉まで辿っていくという非常にオーソドックスな展開で、装飾については、現在の名工にそれを再現させるということまで行っている。こういう演出は、細工がどれほど高いレベルで行われていたかを改めて確認する上で非常に有用であり、しかも細工の再現が見る者を惹きつける効果がある。この番組のように、ある程度の時間を確保できる美術ドキュメンタリーであれば、ぜひこういったコーナーを設けてもらいたいと常々思っているが、そういう点でも必要にして十分な演出、構成であったと思う。
 現在のNHKのドキュメンタリーは、奇を衒った演出が多く、見ていて辟易することが多いが、オーソドックスであることが良いことも多いものである。特にこの作品の場合、歴史的、美術的、文化的な広がりまで網羅しており、本当に過不足のない情報量で、構成が引き締まっていたことも注目に値する。難を言えば、香川照之が案内役として登場していたのが無駄ということであり、これだけしっかりした構成になっている番組に、ホスト役をあえて用意する必要はなかったのではないかと思う。ホスト役が登場する場面だけ、何だか間が抜けたような印象があったが、この点だけが唯一惜しい部分であった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『よみがえる金色堂(映画)』
竹林軒出張所『奥の細道 マンガ日本の古典25(本)』

by chikurinken | 2024-03-27 07:05 | ドキュメンタリー
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