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竹林軒出張所

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『最高の木を求めて』(ドキュメンタリー)

最高の木を求めて
あるバイオリン職人の4年

(2021年・ノルウェーNorsk Fjernsyn、BALDR Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ヴァイオリンのように
このドキュメンタリーも空洞だった


『最高の木を求めて』(ドキュメンタリー)_b0189364_10291950.jpg イタリア・クレモナでヴァイオリンづくりに携わる職人に密着するドキュメンタリー。
 この職人、ガスパーは、ストラディバリウスを超えるヴァイオリンを作ることを日々夢見ているが、そのために必要なのはすばらしい素材であると感じている。ストラディバリウスにはカエデの木が使われているが、目が詰まった非常に美しい素材であり、これが現代ではほとんど手に入らない。ストラディバリウスの製作者、アントニオ・ストラディバリは、現在のボスニアあたりで材を調達したのではないかと考えられており、ガスパーもボスニアの森で優れた材を調達できるのではないかと考え、そちら方面で材の入手を手配する。だが現実的には、ボスニア紛争の影響で材が取れる森には地雷が埋まっているため、たとえ良い材木があったとしても入手はきわめて困難である。ガスパーの目標は、良い材を手に入れて優れたヴァイオリンを作り、そのヴァイオリンをヴァイオリニストのジャニーヌ・ヤンセンに演奏してもらうことであるという。
『最高の木を求めて』(ドキュメンタリー)_b0189364_10292359.jpg このドキュメンタリーでは、材を入手し、ヴァイオリンを製作してヤンセンに贈るまでの過程を追っていくわけだが、この類のドキュメンタリーに付きもののヴァイオリン製作の現場はほとんど出てこず、入手に奔走するガスパーの映像ばかりが出てくる。そのため、楽器作りという観点からの面白味はほとんどない。木を探す過程ばかりだから、家具職人や植木職人でも同様の映像になるわけである。(タイトルから類推すると)4年間取材を続けたらしいのでそれなりの労苦はあったのだろうが、できあがった作品は中身が薄く面白味のないものになってしまった。ドキュメンタリーとして考えると、ストラディバリウスどころか合板製ヴァイオリンみたいな出来になってしまっているのがはなはだ残念なところである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『バイオリンの聖地クレモナへ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ストラディヴァリウスの謎(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ストラディバリに挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ストラディバリウスをこの手に!(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのショパンコンクール(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2024-03-11 07:28 | ドキュメンタリー
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