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竹林軒出張所

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『となりのトトロ』(映画)

となりのトトロ(1988年・スタジオジブリ)
監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
音楽:久石譲
出演:日髙のり子、坂本千夏、糸井重里、島本須美、北林谷栄、高木均

神は細部に宿る

『となりのトトロ』(映画)_b0189364_11002825.jpg 「今さら」の『となりのトトロ』ではなはだ申しわけなく感じるが、ホントに久しぶりに(10年ぶりぐらい)通しで見たので感想など書いてみたいと思う。
 この映画、最初に見たのは1989年だったと思う。場所は飯田橋の名画座(ギンレイホールかな)だったような記憶があるが、併映は(当然だが)『火垂るの墓』だった。当時はあまり強い印象はなく、「プログラムピクチャー」という程度の感想だった。ちなみにこの映画、その後何十回も見ており、というのは子どもが小さい頃よくビデオで見せていたためである(僕自身が好きで好きでたまらなくて何度も見ているわけではない)。そのためセリフやシーンについてもかなり細かいところまで憶えており、映像を見ていると次のセリフが自然に口からついて出たりする。とは言え、久々に見ると今まで気に留めなかったような見るべき箇所があちこちにあり、映像の中で再現されているリアリティにあらためて感心したりするのである。
 背景も非常に美しく、日本の田園地帯に見られる自然環境(里山風景とでも言うのか)が実にうまく再現されている。舞台は昭和30年前後かと思うが、我々の世代にとってはノスタルジーを感じるようなシーンも多々ある。
 何より驚くのが、まったく架空の存在にリアリティを感じる点で、ススワタリの動きや猫バスの内部など、不思議なことだが手触りを感じるというか、かつて経験しているかのように錯覚する表現が多い。「神は細部に宿る」という言葉を体現しているかのようである。
 自然への畏敬や人間の優しさなどテーマも非常に心地良く、今さらながら子どもに見せるには格好の素材であったと感じる。
 難点は、宮崎駿作品に多いのだが、本業でない声優が使われている点で、お父さん役の糸井重里の棒読みセリフが聞こえてくると、そのたびにガッカリしてしまう自分がいる。『魔女の宅急便』に出てくるキキのお父さんの声だったら良かったのにといつもながら思う。特に父親と母親との会話のシーンで、その差が際立ち(母親役の)島本須美の表現力はやはり大したものだとあらためて感じたりする。宮崎駿はその後の作品でも、たびたびこういうふうに素人をキャスティングしているが、なぜ宮崎がそういう表現を好むのか、それだけが僕にはわからない。ちなみにお婆ちゃん役の北林谷栄はプロの声優ではないが、非常に味があって良かったと思う。アニメでも北林谷栄はやっぱり婆さん役なんだなと感じる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『天空の城ラピュタ(映画)』
竹林軒出張所『魔女の宅急便(映画)』
竹林軒出張所『崖の上のポニョ(映画)』
竹林軒出張所『未来少年コナン (13)〜(26)(アニメ)』
竹林軒出張所『ルパン三世 カリオストロの城(映画)』
竹林軒出張所『夢と狂気の王国(映画)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』
竹林軒出張所『未来少年コナン (1)〜(12)(アニメ)』
竹林軒出張所『パンダコパンダ(映画)』
竹林軒出張所『ゲド戦記(映画)』
竹林軒出張所『コクリコ坂から(映画)』
竹林軒出張所『夢と狂気の王国(映画)』
竹林軒出張所『ジブリと宮﨑駿の2399日(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『高畑勲、「かぐや姫の物語」をつくる。(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『吾輩はガイジンである(本)』
竹林軒出張所『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん(映画)』

by chikurinken | 2024-02-26 07:00 | 映画
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