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竹林軒出張所

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『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(ドラマ)

アイドル誕生 輝け昭和歌謡(2023年・NHK)
脚本:児島秀樹、吉田照幸
演出:吉田照幸
出演:宇野祥平、宮沢氷魚、三浦誠己、吉柳咲良、萩原聖人

輝け!「再現ドラマ」
輝け! 阿久悠  ……アホらしこっちゃ


『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(ドラマ)_b0189364_09594102.jpg 70年代の日本歌謡史を彩った2人、作詞家の阿久悠と音楽プロデューサーの酒井政利を中心軸に据えて、70年代の歌謡史を辿るというコンセプトの再現ドラマ。ナレーションは、阿久の盟友である作曲家の都倉俊一(役)が行うという趣向になっている。
 このドラマは、基本的に70年代の歌謡史を再現しようという狙いだと思うが、実際にそれ以上のものはほとんどないと言って良い。阿久と酒井のライバル意識みたいなものが核にはなっているが、「だから何だ」という程度のもので、面白味はない。阿久が中心になって作ったオーディション番組、『スター誕生』の裏話や、山口百恵とピンク・レディーの売り出しの過程がストーリーの目玉になっており、全体的にうまいこと再現しているとは思うが、ホントに再現だけで終始していて、最近のNHKに多い種類の(中身の薄い)ドラマと言える。いよいよネタがなくなって模倣で終始するという戦術に変えたんだかどうなんだかわからないが、こういうドラマに接すると、日本のテレビ・ドラマも末期的な症状を呈しているような気さえしてくる。
 主人公の2人をはじめ、都倉俊一、関係している当時の歌手たち(山口百恵、ピンク・レディー、桜田淳子、森昌子、清水由貴子ら)、それから実在の関係者も役者が演じており、似ている人もいればあまり似ていない人もいるという按配で、そういう点でもやはり「再現ドラマ」に終始しているわけである。
 ちなみに僕自身は、70年代前半はよく歌謡曲を聴いており、ラジオのベストテン番組なども毎週聴いていたクチだが、ピンク・レディーが登場したあたりから一切シャットアウトするようになった。このあたりの事情は『悪魔のようなキャンディーズ(ま、見た目ですけどね)』でも書いたが、ああいう類の破廉恥な売り方(「お色気路線」とでも言うのか)が不快だったためである。ピンク・レディーも阿久悠が仕掛けたもので、それを考えると、僕が歌謡曲を聴かなくなったのもすべて阿久悠が元凶ということになる。僕自身は一部の昭和歌謡(筒美京平やいずみたく、松本隆、松田聖子など)については今でも高く評価しているが、阿久悠の歌詞については毎度ながら「なんじゃこりゃ」と感じる。そのため阿久悠のことはまったく評価に値しない香具師だと思っているため、世間が阿久悠をやたらに持ち上げているのを聞くと、とたんに白けてしまう。ピンク・レディーについても、当時、こういう売り方は世間が受け入れないだろうと僕は高をくくっていたが、案に相違して、大ヒットを飛ばしたのだった。驚いたのは子どもたちが支持していたことで、僕はてっきりスケベ親父以外には受けないと思っていたため、その事実を意外に感じた記憶がある。いずれにしても、僕の日本流行歌史は(阿久悠のせいで)1976年で停止し、その後は同時代として流行歌を聞くことはほとんどなくなった。そのため、たまに80年代〜90年代の流行歌を聴いたりしても、自分の中で「新しい」方の部類に入れてしまうのである。だから若い人たちと話していて彼らが90年代の歌を知らなかったりすると驚いたりするんだが、たぶんこちらの方が驚かれているんだろうと冷静に考えればわかる。
『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(ドラマ)_b0189364_09594660.jpg 閑話休題。このドラマでは、そういう僕にとっての負の部分が中心に描かれているわけで、知らないエピソードも多かったが、ドラマ的な深さがないだけでなく、主人公の阿久悠とピンク・レディーが成功例みたいに描かれているのもあまり納得がいかないわけである。ただピンク・レディーが、ビクターのエライさんの前で初めてパフォーマンスをやったときに、エライさんの一人が「これじゃあ場末のキャバレーじゃないか」と言っていたのは言い得て妙だと思った(また「ペッパー警部って誰なんだ?」というセリフも)。阿久悠の企画は、結局のところ、日本社会がとち狂い始めたのと軌を一にした日本社会の徒花だったのかも知れない……などと考えたりもする。
 なおキャストは僕が知らない人ばかり(見たことがあったのは萩原聖人と端役の仙道敦子だけだった)で、本当の(バラエティ番組などで使われる)「再現ドラマ」のようだったことも付記しておく。また、誰が演じられているのかわからないケースが非常に多かったのも残念な部分である。「久世光彦」や「有馬三恵子」も出ていたようである。「有馬」については(当時の南沙織のエピソードを知っていたために)薄々気が付いたがそれでも確信が持てなかった。有名な人については人物を紹介するテロップを出したりしても良かったんじゃないかと思う。所詮「再現ドラマ」なんだから。
★★★

参考:
竹林軒出張所『悪魔のようなキャンディーズ』
竹林軒出張所『筒美京平からの贈りもの(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『HIT SONG MAKERS(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『歌謡曲 —時代を彩った歌たち(本)』
竹林軒出張所『植木等とのぼせもん (1)〜(7)(ドラマ)』
竹林軒出張所『蝶の山脈 〜安曇野を愛した男〜(ドラマ)』
竹林軒出張所『私が愛したウルトラセブン(ドラマ)』
竹林軒出張所『ふたりのウルトラマン(ドラマ)』
竹林軒出張所『トットてれび (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『小説吉田学校(映画)』

by chikurinken | 2024-02-12 07:59 | ドラマ
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