カラーでよみがえる「夢であいましょう」
(2023年・NHK)
NHK-BS
「夢であいましょう」までカラー化!
1960年代に「夢であいましょう」というバラエティ番組が放送され、数々のヒット曲を生み出したのは有名な話だが、中でも坂本九の「上を向いて歩こう」は国内だけでなく、アメリカやヨーロッパでもかなりヒットし、アメリカではビルボードで第1位を獲得するという快挙をやってのけている。その「夢であいましょう」だが、U-NEXTで「上を向いて歩こう」の特集回と最終回が配信されており、そのうち「上を向いて歩こう」の回を見てみた。ところがその一週間後に、同じ回のカラー化されたバージョンがNHKで放送されるということになり、結局この回、60年前の番組であるにもかかわらず、モノクロ版とカラー版の両方、つまり都合2回見たのだった。
「夢であいましょう」は、出演者もスタッフも今見るとビックリするような顔ぶれで、その多くは「夢であいましょう」の後に名前が売れたということらしいが、それでもこれだけのメンツを集めるのは奇跡的だったと今振り返ると思う。内容も今のバラエティ番組と違って非常に充実しており、「上を向いて歩こう」が他の国でどういう扱いになっているかとか、他の国でカバーされたバージョン(世界的にヒットしたために、カバー版がいろいろな国で発売された)を紹介するという、知的好奇心を刺激するような内容になっている。しかもいくつかのカバー版(「SUKIYAKI」や「忘れられない芸者ベイビー」などのタイトル)を日本語訳した逆輸入版を、登場する歌手(田辺靖雄やデューク・エイセスなど)が歌うなど面白い趣向もある。しかもこの歌を日本語訳したのが、原曲の作詞者である永六輔と来ていて、それ自体が高尚なジョークになっている。他にも踊りやコントなどの他、藤村有弘のデタラメ外国語の「上を向いて歩こう」まであり、サービス精神に溢れた構成に感心する。もちろん坂本九のオリジナル歌唱もある。
カラー版は、当然モノクロ映像に着色したものだが、違和感もあまりなく、映像が華やかになった上、カラーであるため自然に映るようになっており、これも価値が高いと言える。カラー版の放送に際しては、黒柳徹子(「夢であいましょう」の出演者)の解説や感想もあった。大変地味ではあるが(番宣もあまりしていなかったようだ)非常に優れた企画であった。NHKには、このような過去の映像の掘り出しや修復などの作業を今後も継続していってほしいと思う。つまらない番組を作るよりは、こちらの方がよほど価値がある。
★★★☆参考:
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