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竹林軒出張所

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『ジブリと宮﨑駿の2399日』(ドキュメンタリー)

ジブリと宮﨑駿の2399日
(2023年・NHK)
NHK-総合 プロフェッショナル 仕事の流儀

創作の裏を
こんなにさらけ出してしまっても良いものか


『ジブリと宮﨑駿の2399日』(ドキュメンタリー)_b0189364_08360287.jpg NHK総合で放送されている『プロフェッショナル』という番組では、これまでも宮﨑駿に密着した回があったが、それはNHKの担当記者が宮﨑駿への密着を許可されているためである。宮崎は元々大のインタビュー嫌いであるが、なんでもその宮崎から、書生として入ってくるのならば受け入れると言われたことから、小型カメラを持ってつきまとうという取材が可能になったらしいのである。そのため、このドキュメンタリーでは、人に見せないような宮﨑の表情や姿もしっかり映し出されている。
 この『プロフェッショナル』では、特にスタジオジブリの新作『君たちはどう生きるか』(監督・脚本:宮﨑駿)の製作場面が中心になっているが、産みの苦しみでのたうち回る宮崎が映像に捉えられており、そういう点では大変貴重である。さらには、この映画に自分自身と故・高畑勲との関係を投影しているという、製作秘話のような話までもが赤裸々に語られていた。要は、この映画に登場する「大叔父」が高畑勲の存在の象徴で、主人公を助ける「青サギ」が、プロデューサーの鈴木敏夫の象徴だということらしいのである。つまり、宮﨑駿にとって、高畑勲は精神的支えであったと同時に、克服すべき存在であり続けたということらしいのである。そして「高畑勲という存在」の克服がこの映画で表現されているというのだ。すごい話だが、同時に、創作の裏をこんなにさらけ出してしまっても良いものなのかとも思う。
 このように、個人的な要素が背景になっていたこともあるのか、(アニメの脚本に相当する)絵コンテの製作が遅々として進まず、苛立つ宮崎の映像もふんだんに出てくるため、相当な迫力となって画面から迫ってくる。ひとえに担当記者による「書生のような」密着がその映像化を可能にしたんだろうが、芸術家の製作風景にこれほど迫った映像はこれまでなかったと言えるほど、迫力のあるシーンが随所に出てくる。番組自体には、大げさな演出もなく、番組の構成も無理がないため、ドキュメントとして価値の高い作品ができあがっている。遊びの要素に溢れたモンタージュもなかなか楽しい。
 『プロフェッショナル』は基本的に好きな番組ではなかったが、この回については、以上のような点で別格と言えるものであった。(これまでベールに包まれていた)『君たちはどう生きるか』の映像も出てきて、あの作品への関心を呼び起こすプロモーション的な役割も果たしている。僕自身も、タイトルからこの作品に興味が湧かなかったが、少し見てみたいという心持ちになった。その点でプロモーションという意味では成功だったと言える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夢と狂気の王国(映画)』
竹林軒出張所『高畑勲、「かぐや姫の物語」をつくる。(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (1)、(2)(本)』
竹林軒出張所『風の谷のナウシカ (3)〜(7)(本)』
竹林軒出張所『未来少年コナン (1)〜(12)(アニメ)』
竹林軒出張所『未来少年コナン (13)〜(26)(アニメ)』
竹林軒出張所『パンダコパンダ(映画)』
竹林軒出張所『となりのトトロ(映画)』
竹林軒出張所『魔女の宅急便(映画)』
竹林軒出張所『崖の上のポニョ(映画)』
竹林軒出張所『ゲド戦記(映画)』
竹林軒出張所『コクリコ坂から(映画)』
竹林軒出張所『山賊の娘ローニャ(1)〜(3)(アニメ)』
竹林軒出張所『吾輩はガイジンである。(本)』
竹林軒出張所『久石譲 いま世界で奏でる音楽(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2023-12-27 08:36 | ドキュメンタリー
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