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竹林軒出張所

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『青い募金箱』(ドキュメンタリー)

青い募金箱 イスラエル建国の真実
(2021年・Norma Production他、国際共同制作)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

美談の背景にあった事実

『青い募金箱』(ドキュメンタリー)_b0189364_08442022.jpg イスラエル建国に当たり、土地を収用し植林などを行ってイスラエルの発展に尽くしたとされるヨセフ・ワイツの仕事を見直すことで、イスラエル建国の実相に迫ろうとするドキュメンタリー。
 主人公は、ヨセフ・ワイツのひ孫にあたるミハル・ワイツで、子どもの頃から曾祖父(つまりヨセフ)の偉業についてあちこちで語られそれを聞いて育ってきたという女性。ただし実際はそんな美化された話で終わらないはずと感じ、ヨセフが残した日記に直に当たってその真相を探ろうとし始める。
 そしてそこで見えてきたのは、元々その地に住んでいたパレスチナ人の強制退去の事実だった。実際には、他所の国に住んでいる地主から土地を買い上げ、現在そこに住んでいる人々を強制退去させたということらしいが、この土地収用事業によって、きわめて多数のパレスチナ人が他の地域に退去させられた。しかも彼らが戻って来られないようにするため、その地にユダヤ人を入植させたり、あるいは植林して森にしてしまったりということが国家事業として行われ、この過程で現在のイスラエルの領土が作られていった。その際に指揮を執ったのがヨセフ・ワイツであるということがわかったのだ。美談に仕立て上げられていた植林事業の背景には、そういう事実があったのだった。
 ヨセフ・ワイツ自身も、パレスチナ人の強制退去に対して逡巡があり、時には罪悪感に苦しんだことが日記から窺われるが、それでも彼らがしてきたことによって数多くの苦しみが生まれたのは事実で、イスラエル建国の背景には血塗られた過去があったというわけだ。
『青い募金箱』(ドキュメンタリー)_b0189364_08442527.jpg 実際現在でも、森の中や街の中に、かつての住民の住まいが廃墟になって残っていて、パレスチナ人のかつての生活が遺跡のように残されている。それは決して古代遺跡ではなく、ほんの数世代前の血塗られた歴史であるということを、ミハルが実感するというところでこのドキュメンタリーは終わる。
 イスラエルの建国の際にパレスチナ人から土地を奪ったというのは有名な話だが、こうしてそれを具体的かつミクロ的な形で振り返り記録に残したという意味で、なかなか有意義なドキュメンタリーだったのではないかと思う。途中少し眠くなったが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 18(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『よみがえる悪夢 1973年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『スエズ運河(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『十戒(映画)』

by chikurinken | 2023-11-30 07:43 | ドキュメンタリー
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