フェルメールに魅せられて
“史上最大の展覧会”の舞台裏
(2023年・蘭Docmakers/NTR)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
「史上最大のフェルメール展」の舞台裏
17世紀オランダの画家、フェルメールは、独特な世界の絵画を残しているが、現存している作品はわずか37点(そのうちいくつかは真贋論争がある)に過ぎない。非常に希少性が高い作家であるため、人気も高く、フェルメール作品が1点あるだけで展覧会が成り立つほどである。実際そういう展覧会もあった(
竹林軒出張所『わたしの「京都慕情」』を参照)。
さてその希少性の高いフェルメール作品を一堂に会して展覧会を開こうとしたのが、アムステルダム国立美術館。この美術館が、フェルメールの地元のオランダにあることを考えると、生まれるべくして生まれた企画とも言えるが、成功かどうかはフェルメール作品をどれくらい集められるか、つまり、作品を所蔵している美術館がどの程度、貸し出しに応じてくれるかが鍵になる。実際には、28点が集まり(そのうち4点は同美術館所蔵)、「史上最大規模のフェルメール展」という呼称に恥じない立派な展覧会になった。同時に、それぞれのフェルメール作品は、同美術館のスタッフが赤外線写真などを使って詳細に調査したため、新しい事実も判明している。そういう意味でも画期的な展覧会だったと言える。

このドキュメンタリーでは、その舞台裏を見せていくわけだが、この展覧会を企画したキュレーターの、フェルメール作品への思い入れが紹介されたり、フェルメール作品の真贋論争なども紹介される。フェルメール作品の真贋については、ワシントン・ナショナルギャラリーにある「フルートを持つ女」が紹介される。この作品も今回貸し出しされたものだが、ナショナルギャラリー側は詳細な調査の結果、この作品はフェルメール作品ではないという結論をすでに出していたが、今回のオランダ側の調査では、新作という結論が出た。意見はそれぞれの美術館で対立しているが、今回の展覧会では、真作という結論の根拠になった同様の技法の作品(「赤い帽子の女」)を並べて展示することになった(ちなみにこの作品、ナショナルギャラリーでは贋作の根拠になっている)。要は、真贋を観客自身に判断してもらおうという面白い主旨である。こういったことが可能なのも多くの作品を集めることができたためで、今回の展覧会ならではの企画と言うことができる。
アムステルダムは遠い上、ものすごい数の人が集まりそうなので、わざわざ見に行こうという気は起こらないが(そもそも展覧会自体もう終わっている)、こういうユニークな企画の展覧会はぜひ世界中でどしどしやってほしいものだなどと、このドキュメンタリーを見ていて感じたのだった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『フェルメール盗難事件(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『消えたフェルメールを探して(映画)』竹林軒出張所『真珠の耳飾りの少女(映画)』竹林軒出張所『わたしの「京都慕情」』