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竹林軒出張所

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『中国“経済失速”の真実』(ドキュメンタリー)

調査報道・新世紀 File1
中国“経済失速”の真実

(2023年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル

「中国経済の悪化」よりも
「NHKスペシャルの劣化」に目が行く


『中国“経済失速”の真実』(ドキュメンタリー)_b0189364_09042007.jpg 「調査報道」というタイトルに惹かれて見てしまったが、「調査報道」と言われると少し違和感を感じるというそういう類のドキュメンタリー。
 要は、中国の経済が悪化していることを主張する番組で、それを証明するために(ネット上のデータを集約するという)いわゆるOSINTの方法をNHKでも採ってみましたという主旨である。
 中国の国内は現在、不動産バブルが暗礁に乗り上げた状態で、不動産最大手の恒大グループが危機的状況にあるのは有名な話。もっとも中国の経済は国家が管理しているため、この不動産不況もある程度は政府が織り込み済みであるという話も聞く。したがって、それだけを取り上げ中国経済が危機的状況というのは一つの見方に過ぎない。
 そこでこの番組では、地方政府の経済が債務過剰(この番組では1,000兆円を超えるとしていた)で、国内でも給与不払いのデモがしきりに起きていることを取り上げ(映像をSNSで収集して確認している)、地方経済が機能不全に陥っていることを訴えるのである。
『中国“経済失速”の真実』(ドキュメンタリー)_b0189364_09042457.jpg 言わんとすることはわかるしそれほど奇を衒ったものもないが、正直目新しさがほとんどない。地方政府が主導する公共事業に問題が多発しているのも有名な話だし、給与不払いは中国では以前から多発しているようである。特に「調査報道」を強調してOSINTをやってみたからと言って、裏がとれた正確な情報が出てきているというわけでもない。それなりに疑わしいデータも混ざっていた。それに日本国内でも似たような問題はあるし、他所の国より国内の問題にまず目を向けるべきではないのとつい思ってしまう。
 要するに「中国経済が悪化している」という情報が視聴率のとれるネタであり、結果ありきで番組作りをしているために、こんな面白味のない番組ができたということなんではないかと思われるが、結局のところ「中国経済の悪化」よりも「NHKスペシャルの劣化」が強調される結果になったのは皮肉であった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『中国・流出文書を追う(ドキュメンタリー)』
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竹林軒出張所『破綻する影の銀行(ドキュメンタリー)』
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by chikurinken | 2023-11-10 07:04 | ドキュメンタリー
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