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竹林軒出張所

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『神の子はつぶやく』(ドキュメンタリー)

神の子はつぶやく
(2023年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル シリーズ“宗教2世”

まやかしの三文芝居

『神の子はつぶやく』(ドキュメンタリー)_b0189364_21245767.jpg 「シリーズ“宗教2世”」と名うって『NHKスペシャル』枠で放送されたドラマ。
 とりあえずドキュメンタリー枠だから、ドラマとしてより問題性をしっかり伝えられているかが論点になるわけだが、正直内容がこれではまったく話にならない。「宗教2世」という括りなんで、見る前は、統一教会やエホバの証人が念頭に置かれていると思っていたが、まったくそういった類の、つまり詐欺的、収奪的な要素が描かれておらず、主人公の宗教が(過剰な面はあるものの)「普通の信仰」レベルになっている。そのため、問題点の欠片も伝えられていない。
 主人公(田中麗奈)は中年の女性で中高生ぐらいの娘が2人いる。夫は気の良い無宗教の男(森山未來)だが借金生活で貧しく、その貧しさゆえ、主人公はキリスト教風の宗教に入信する。この宗教では世間の悪しき風俗を「サタン」などと呼んでいるため、統一教会やエホバを思わせるが、この宗教の問題点は過剰に世間を遠ざけることぐらいで、財産を収奪するとか、献身的な労働を要求するとかいう要素があまりなく、むしろ貧しい主人公一家を助けてくれるような存在になっている。統一やエホバに気を遣ったのか知らんが、あの手のカルト宗教の問題性がまったく描かれていない。下手に刺激しない方が良いみたいな、及び腰の姿勢が製作者にあったんだかどうだか知らないが、こんな態度で取り組むんだったら、そもそもこんなテーマには近づかない方が良い。
『神の子はつぶやく』(ドキュメンタリー)_b0189364_21250143.jpg しかも父親が突然死して家庭が崩壊した後、長女(河合優実)が家出して風俗に走るなど、あまりにありきたりな展開で、ドラマのストーリーとしても工夫がなく、実につまらない。製作に当たって「宗教2世」の人々にかなり取材しているはずなのに、なんでこんな安っぽいストーリーに仕上げるのか、その意図がわからない。展開もゆるく、途中でかなり飽きていた。こんな中途半端な「告発」ドラマなら世の中にまったく必要ない。問題点に真剣に取り組む気がないのであれば、ドキュメンタリーなんか作る意義はないと言っておこう。ましてやこんな三文芝居は不要。
★★

参考:
竹林軒出張所『“宗教2世”を生きる(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カルト宗教信じてました。(本)』
竹林軒出張所『カルト宗教やめました。(本)』
竹林軒出張所『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話(本)』
竹林軒出張所『自民党の統一教会汚染(本)』
竹林軒出張所『決定版 マインド・コントロール(本)』

by chikurinken | 2023-11-06 07:24 | ドキュメンタリー
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