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竹林軒出張所

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『ヒマラヤ “悪魔の谷” 』(ドキュメンタリー)

ヒマラヤ“悪魔の谷” 〜人跡未踏の秘境に挑む〜
(2023年・NHK)
NHK-総合 NHKスペシャル

桁外れのスケールの沢下り

『ヒマラヤ “悪魔の谷” 』(ドキュメンタリー)_b0189364_10172027.jpg 『NHKスペシャル』の冒険モノ。全体的に著しく質が低下している『NHKスペシャル』だが、冒険モノはいまだに健在という感じ。危険が伴う上、映像自体が貴重なものなんで、それも当然と言えば当然ではある。
 今回は、ヒマラヤ山系の「セティ・ゴルジュ」という大峡谷が舞台で、ここは今まで人が入ったことのない場所だそうで、それもあってこの周辺では地質調査も進んでおらず、「空白地帯」という言われ方を(この番組では)している。今回、この「空白地帯」に果敢に挑むことで「空白」状態を解消するというのが、この番組の趣旨である。なお、この地に乗り込むのは、渓谷探検家という肩書きを持つ田中彰と大西良治。
 ヘリコプターでベースキャンプまで赴き、そこで下調査と準備を重ねてから、いざアタックを敢行。高台の平地から200メートル以上の深さの谷底までロープで降りていく。ただしこちらはまだ比較的浅い方の谷のアッパーゴルジュである。いったんアッパーゴルジュを踏破した後、頂部に戻って、今度は深さが400メートルにも及ぶ大ゴルジュに降りていく。あちこちに滝があってその水量が予想以上に多かったが、こちらも無事に予定通り踏破が終わって、ベースキャンプまで帰還することができ、探検は成功裏に終わる。
『ヒマラヤ “悪魔の谷” 』(ドキュメンタリー)_b0189364_10172573.jpg この番組では、この過程を(高性能の)小型カメラやドローンなどの映像で辿っていくが、同時にこのゴルジュがどのようにできあがったかという謎解きも途中で紹介されていて、なかなかに興味深い。こういう推理が行われたのは、今回の冒険に地質学者が関与していたこととも関係している。そもそもこのプロジェクト、冒険家とメディア(NHK)と学者が三位一体で関わったものらしく、ある意味この三者の共同作業と言うことができるわけである。そのために単なる冒険譚に終わらず、学術的なアプローチも行われていたというわけである。結果的にそれがこの冒険ルポの価値を高めることになった。
 番組としてもうまくまとめられており、『NHKスペシャル』の中でも上出来の部類ではないかと思う。何より貴重な映像が非常に多く、見ていて飽きないのが良い。ベースキャンプへの帰還部分が端折られていたりしていたために多少物足りなさも残るが、これまでのNHKの方法論から推測するならば、おそらく『BSスペシャル』か何かで2時間枠の完全版として再構成された上で放送され、このあたりの部分も登場するんじゃないかと思う。もっとも2時間枠になったりすると、かなり間延びしてしまうのがNHKドキュメンタリーの常ではあるが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『栗城史多の見果てぬ夢(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ドキュメンタリー3本』「エベレスト 〜世界最高峰を撮る〜」
竹林軒出張所『デナリ大滑降 究極の山岳スキー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヒマラヤ8000m峰 全山登頂に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『銀嶺の空白地帯に挑む(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『手足をなくしても 〜ある登山家の挑戦〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『外道クライマー(本)』
竹林軒出張所『特集とスペシャルの間』

by chikurinken | 2023-08-16 07:16 | ドキュメンタリー
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