ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『巨大橋に挑む』(ドキュメンタリー)

NHK特集 巨大橋に挑む 瀬戸大橋とび職の技
(1986年・NHK)
NHK-BSプレミアム NHK特集・選

テクノロジー礼賛と労働礼賛の番組

『巨大橋に挑む』(ドキュメンタリー)_b0189364_10120991.jpg 瀬戸大橋の建設過程(の一部)を紹介するドキュメンタリー。瀬戸大橋は着工が1978年で開通したのが1988年。つまり、このドキュメンタリーの作成時、すでに主要部分の工事が終わって、いよいよ最終段階に入るという状況になっている。
 そのため、この番組で扱われているのは最終段階に近い作業で、主塔部分からケーブルを架ける作業と橋桁を取り付ける作業である。巨大な重機ももちろん使われるわけだが、多くの作業は人の手を使って行われることになる。参加する作業員は全国各地から集められたとび職の人々で、命綱を付けた状態でボルト締めやケーブル敷設などの作業に携わる。高所から作業員を捉えた映像もふんだんに出てきて、見ていて足がすくむ思いがする。こういった作業員のうち数人に密着して、私生活やその実作業を映像に捉えるというのがこのドキュメンタリーの狙いである。
 作業員は、請負で派遣されてきた人々もいるようだが、多くの作業員は出稼ぎに近いようである。そのため私生活でも、出稼ぎ労働者さならが自ら洗濯などを行っている。建設労働者らしく、酒を交えた宴会も頻繁に持たれるようで、酒盛りの場も映し出されていた。
『巨大橋に挑む』(ドキュメンタリー)_b0189364_10122008.jpg 作業の大変さや建造物の壮大さなどはよく伝わってきたが、こういう大型建築物の建設自体、必ずしもポジティブな面だけではないのは明らかで、現在の視点であれば、そういうネガティブな側面にも目を向けたいところである。だが時代が時代だけに、基本的にテクノロジー礼賛の作品になってしまうわけだ。そんな中でとりわけ興味深かったのが、(現在とも共通するのかも知れないが)最後は人海戦術というあたりであった。ただ一方で、こういう巨大建築を見ると、やはり人間の手に余るものなのではないかとも感じる。現在の視点からは、本当にこんな巨大なものをヒトが作る必然性があるのか、そのあたりを問いたいとも考えてしまう。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『佐久間ダム建設記録第一部、第二部(映画)』
竹林軒出張所『スエズ運河(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『黒部の太陽(映画)』
竹林軒出張所『新しい製鉄所(映画)』
竹林軒出張所『日本のインフラが危ない(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ダム建設中止問題の実在に関する考察』
竹林軒出張所『あるダムの履歴書(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『引き裂かれた海(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『さよなら青函連絡船(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2023-07-10 07:11 | ドキュメンタリー
<< 『黒潮の狩人たち』(ドキュメン... 『ゆらぐモルドバ』(ドキュメン... >>