仕事で使っているパソコンからネット接続できなくなった。調べ物が非常に多い仕事であるため、ネット接続ができないというのは致命的で、すぐにでも復旧しなければならない。Wi-Fiルーターや光回線ルーターをいろいろと調べ、設定もいろいろと確認してみたが、なかなか復旧しない。ところがiPhoneやiPadで接続を試みると、普通に接続できる。また、家人のパソコン(同じ機種)からも普通にネットを利用できる。ということは、接続できないのは、使っているパソコンからのみということで、このパソコンの異常が原因ということになる。
その後、このパソコンからWi-Fi経由でなくイーサネット経由で接続を試みたところ、こちらも上手く行かない……ということで、このパソコンのネットワーク機能に異常があるということが予測できる。修理することも考えたが、ネットワーク機能がロジックボード(つまりパソコンの本体)上にあることを考えると、修理するとなるとロジックボードの交換……こうなると修理ではなく中身の移植ということになる。他の部分が健常であれば、(ロジックボードが活きている)古いジャンクから探してきて移植などということも考えられるが、現実的には、リスクを考えるとあまりやる意味がないように思われる。
僕のパソコンは、
前に紹介したMacbook Pro mid 2012というもので、使い始めてから8年目のブツである。このパソコンは、僕に言わせるとマック史上最高の機種で、故障も少ない上、内部へのアクセスが簡単でメモリやストレージも簡単に交換できる、しかも発表後10年経った今でも現役で使える性能がある。
中でも「メモリやストレージの交換が簡単」というのが非常に重要で、これはかつてのアップルのノートパソコンの多くで交換が構造上困難だったことと好対照をなしている。裏面のネジを10本外すだけで内部に触れられる状態になり、しかもそのままダイレクトにメモリとストレージにアクセスできる、何だったらロジックボードさえ比較的簡単に取り外すことができる。こういう内部アクセスの容易さは、かつてのアップルノートパソコンになかった。前のiBookでは分解途中で途方に暮れるということもあったし、MacBook 2006もそれなりに大変だった。MacBook 2006については、問題が多くあちこちの修理も必要になったが、このMacbook Proには修理の記憶もまったくない。
付け加えると、このモデル以降のアップルのノートパソコンは、「メモリやストレージの交換が簡単」ではなくなったのである。「簡単ではない」どころか、多くは、ロジックボードに直付けになっているため取り外しが不可能になった。メモリはともかく、ストレージについては何があるかわからないため、交換できるに超したことはない。そういう点で、Macbook Pro mid 2012は、「メモリやストレージの交換が簡単」な最後の機種になったわけで、しかも今でも現役で使えるスペックを持っている「スペシャル」なパソコンとなったのだった(注:ただしRetinaディスプレイのものは2012年モデルでも簡単に交換できないので要注意)。
そういうことであれば、中古市場でそれなりに高価に取引されてもおかしくないが、10年前の機種であるせいか実際はそれほど高価でないものもある。ということで、中古市場を物色することにした。
相場としては、それなりに使えそうなものは3〜4万円程度であるが、中には2万円台のものもある。ということで、今回は、あまり使われた形跡のない2万円台のものを選んだ。ストレージとメモリは今使っているものをそのまま入れ替える予定であるため、いい加減なストレージ、メモリが入っていても一向に構わないが、実際は新品のSSDが入っていて、そのまま使っても実用になるような個体だった。また今回買ったのは15インチのもので、多少かさばるが画面が広くなかなか行けている。
Macは翌日届いたため、仕事上あまりマイナスにならずに済んだ。届いたら起動確認をして(こちらはまったく問題なし)、すぐに裏蓋を開け、現行機種からストレージとメモリを移植する。ものの30分で作業は終わり、スイッチを入れると、前の機種とまったく同じ環境がそのままスタートした。
ストレージを入れ替えるだけで環境を引き継げるというのがいかに便利か実感できるというものである。時間がかかるような面倒くさい設定も不要で、何と言ってもそれが一番大きい。で、起動したところ、従来機種より画面がやけに広く感じる。確かに13インチ(1280×800ピクセル)から15インチ(1440×900ピクセル)になっているため大きくなっているのは確かだが、それにしても大きすぎやしないか……と思う。そこで解像度を確認してみると(1,680×1,050ピクセル)になっていた。僕は知らなかったんだが、この機種は購入時に高解像度ディスプレイに変更するオプションがあったようで、今回僕が買ったのは高解像度ディスプレイ版ということになるわけだ(つまり元の持ち主がオプションを行使していたということ)。手元に届くまで気が付かなかったというのも間抜けな話だが、少しばかり得した気分ではある。ただし文字が全体的に小さくなっているため、僕のような年配者にとっては多少見づらい感じもあるが、それは設定でカバーする。いずれにしても今回の中古マックは大当たりの部類であった。先ほども書いたようにストレージを入れ替えるだけで前の環境をそのまま継承できるというのは大きな魅力である。今はかつてのように、パソコンの性能が日進月歩で進んでいるというわけではないため、古い機種でも意外に使えることが多い。最新機種を追いかけることに、かつてほどの意味がなくなっているわけだ。そういうことを考え合わせると、中古パソコンは(機種によるが)実はかなりの狙い目と言うことができる。
注:
本文中でストレージという言葉を使っているが、これはかつてのハードディスクに相当するものを指す。かつてのハードドライブも今やメモリタイプのもの(SSD)が隆盛であるため、ここではストレージと表記した。実際僕自身は、使用中の他のパソコンでも、ハードディスクはすべてSSDに交換している。
『エルキャピタンって何すか?』のところでも書いたが、SSDに交換して16GBのメモリを入れると、ハードディスク+4GBメモリの時代とまったく別次元の速さになる。そのため、ある程度古い機種であっても十分実用になるわけである。現在1TBのSSDでも1万円以下、16GBメモリも4千円以下で手に入るため、交換可能な機種を持っていて昔の環境でそのまま使っている人がいれば、交換することをお勧めしたい。なお今発売されているMacで、SSDを1TB、16GBメモリにしようとすると、SSD256GB、8GBメモリの標準タイプよりもSSDでプラス56,000円、メモリでプラス28,000円高くなる。つまり合計で84,000円余分にかかるということ(現在の汎用の1TB SSDは1万円以下、16GBメモリは4千円程度で売られているにもかかわらず)。現在のアップルの価格設定がいかに異様かがわかろうというもの。中古パソコンだったら、この費用だけで2〜3台ぐらい買えるんじゃないか。
参考:
竹林軒出張所『パソコンにもプロ化の波』竹林軒出張所『ヨセミテ記』竹林軒出張所『エルキャピタンって何すか?』竹林軒出張所『ホントにマック・ザ・満身創痍』竹林軒出張所『暑い夏、俺の相棒はとうとう目を覚まさなくなった』竹林軒出張所『パソコンからレンタルDVDが出てこなくなった話』竹林軒出張所『理由なき反抗 MacBook編』竹林軒出張所『ディスクは戻ったけれど』竹林軒出張所『病気になって初めて健康のありがたみを感じる』