教育と愛国(2020年・「教育と愛国」製作委員会)
監督:斉加尚代
撮影:北川哲也
出演:ドキュメンタリー
思考が数十年逆戻りしていたあの時代を振り返る
もっとも今も継続中…… 毎日放送の『映像'17』の枠で放送されたドキュメンタリー「教育と愛国」を映画化した作品。
「教育と愛国」は、国粋主義を進めて教育まで歪めてきたアベスガ政権時代の教育行政を描いた作品で、当時、こういった風潮に異議を唱えるマスコミが少なくなっていたこともあり、世間で高い評価を受け、第55回ギャラクシー賞大賞を受賞したりしている。
元々は関西ローカルの放送であったこともあり、広く世間に見てもらうには映画化がうってつけ……ということかどうか知らないが、(未公開の映像も追加した上で)2時間の映画として一般公開された。
今は、あの頃ほどの異常な空気は感じられないが、ここで描かれる、あの時代の政権による教育介入はまったく目に余るものがある。後ろ向きも良いところで、思考パターンが数十年逆戻りしたんじゃないかと思わせる。今になって見ると、さすがに統一教会の影響力は大きいものだと感心する。そしてそういう空気に同調してはしゃいでいたくだらない(後ろ向きの)人物たちもこの映画に多数登場して、こういう人たちの主張に接すると聞くに堪えない低レベルさに呆れてしまう。あのヒステリックな時代が過ぎた今となっては、それが余計目に付く。こういう人間はそもそも人目につくところに出てきてはいけない種類の人間なのである。
この映画で描かれている社会が完全に過去のものになって笑い話になれば良いが、いまだに政権は「統一」問題を総括していないため、いずれまた似たようなバカバカしい政策が頭をもたげてくることは必定である。しかも大坂は、今でも超後ろ向き政権が支配しているようで、そういうことを思うと暗澹とした気持ちになってくる。しかもあの後ろ向き政権を(この映画の製作局である)毎日放送をはじめとする在阪マスコミが支えていた(いる)実態があるというのも嘆かわしい限り。
僕は当初この映画に、元のドキュメンタリー作品の続編である『映像’18 バッシング その発信源の背後に何が』の部分も入っていると思い込んでいたが、実際には純粋に「教育と愛国」の部分だけだった。そのため、こっちの勝手な思い込みのせいではあるが、少々物足りなさを感じた。それに、少し長すぎるんじゃないかとも感じた(上映時間、約2時間)。いずれにしても、右翼的な言動が多数出てきて、そういう言動を発する愚かな連中が教育にまで介入してきている愚かしい状況は見ていて大変気分の悪いもので、爽やかな試聴後感などはまったくないのであった。
第65回JCJ大賞、日本映画ペンクラブ2022年文化映画ベスト1受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『妖怪の孫(映画)』竹林軒出張所『何が記者を殺すのか(本)』竹林軒出張所『同調圧力(本)』竹林軒出張所『「集団の思い込み」を打ち砕く技術(本)』竹林軒出張所『さよならテレビ(本)』竹林軒出張所『詭弁社会(本)』竹林軒出張所『テレビで会えない芸人(映画)』竹林軒出張所『騙されてたまるか 調査報道の裏側(本)』竹林軒出張所『FAKEな平成史(本)』竹林軒出張所『#ジョニー・デップ裁判(ドキュメンタリー)』