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竹林軒出張所

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『キーウ防衛』(ドキュメンタリー)

キーウ防衛 “短期決着”をくじいた戦いの真実
(2023年・独OUP/Gingers Media/Illuminated Content)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

ウクライナ侵攻序盤戦の総括

『キーウ防衛』(ドキュメンタリー)_b0189364_09064613.jpg 2022年2月のロシアのウクライナ侵攻は、各所でウクライナ側の抵抗に遭い、当初の予想のように電撃作戦成功というふうに行かず、ロシア側にも大きな損害を出す結果になった。なぜこの作戦が、ロシアの想定どおり進まず、事実上の失敗に終わったかを解明するため、初期の戦闘を時系列で辿りながら戦線の展開を具体的に紹介し分析するというドキュメンタリーである。元々はウクライナ出身の映画監督、リトビネンコという人の作品らしい。
 ロシアの作戦は、圧倒的な重火器をキーウに投入して首都を攻略し、反露勢力のゼレンスキー政権を倒して新露政権を打ち立てるというプランだったが、キーウの侵攻が失敗に終わり、その他の戦線でも苦戦を強いられたことから、戦闘の長期化に至ったというのが、このドキュメンタリーの解釈である。その上で、首都周辺の戦闘をはじめ、いくつかの戦闘についてその推移を紹介し、ウクライナ側の市民の抵抗が、プーチンの想定以上に大きかったことが直接的な原因であるということを紹介する。しかもロシア軍も戦闘に不慣れだった上、ウクライナ市民がドローンなどの機器や住民からのIT機器を通じた情報を利用することで重火器に対処できたことも、ロシアが兵器を予想以上に失う原因になったと分析する。このあたりは『ロシアには屈しない』と同じ解釈である。
『キーウ防衛』(ドキュメンタリー)_b0189364_09064050.jpg 具体的な戦闘の状況は、グラフィックを多用してわかりやすくしようという工夫があったが、キーウ周辺の戦闘の推移はよくわかるにしても、全体的な戦闘の流れが少し掴みにくく、理解がなかなか追いつかない面が多かったのは少々残念。ただ、こういった種類のドキュメンタリーを作って戦闘の推移をまとめ上げ、記録を残しておくことはきわめて重要である。また、周辺国の武器支援がいかに重要かもよくわかる。同時に大国の重火器部隊が意外に脆いということもよくわかる。このドキュメンタリーは、少し前の状況を伝えるものであるため、最新バージョンがあれば、またぜひ見てみたいものだと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『軍事侵攻・緊迫の72時間(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マリウポリの20日間(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ロシアには屈しない(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ブラッドが見つめた戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『森の中の敵(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ワグネル 影のロシア傭兵部隊(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『戦時下の大統領 ゼレンスキー(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『第三次世界大戦はもう始まっている(本)』
竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ソフィヤ 百年の記憶(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチンの道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『プーチン 戦争への道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『物語 ウクライナの歴史(本)』

by chikurinken | 2023-05-26 07:05 | ドキュメンタリー
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