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竹林軒出張所

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『Black Samurai』(ドキュメンタリー)

Black Samurai
信長に仕えたアフリカン侍・弥助

(2021年・NHK)
NHK-BSプレミアム

弥助ブームにあやかったか

『Black Samurai』(ドキュメンタリー)_b0189364_16534223.jpg 織田信長に使えたという黒人、弥助(やすけ)についてまとめた歴史ドキュメンタリー。
 弥助がどういう人間であるかはまったくわかっていないが、信長の伝記『信長公記』に記述されていることからその存在は信じられていて、信長関連のいろいろな小説やドラマにもこれまでたびたび登場している(アニメの『へうげもの』にも出ていた)。なんでも宣教師ヴァリニャーノの従者だったのを信長が譲り受け、信長が気に入って重用したとされている。本能寺の変の際も信長の側で明智勢と闘ったという話が残っている。
 この弥助だが、近年、日大のロックリー・トーマス准教授(この番組にも登場して案内する)が英語の書籍で紹介したために、海外の映画人の目に留まり、アメリカでアニメ化、映画化されることになった。そういうプチブームにあやかって作られたドキュメンタリーがこれではないかと思われる。
 弥助については記録がほとんど残っていないが、たとえば加藤清正の日記に、信長の側に巨躯の黒人が使えているという記述が見える他、当時の洛中洛外図でも宣教師の側に黒人が仕えている図がある。さらには、日本にやって来た宣教師が本国に提出した報告書に黒人の記載があり、アフリカのモザンビーク島で宣教師が黒人奴隷を3人譲り受け、そのうちの1人を帯同してインドのゴアまで行ったという記録もある。ということで、この番組では、それが弥助だとほぼ断定していた(登場する東大の准教授が断定していた……やや早計だと思うが)。
 他にもあちこち想像を巡らせて、弥助が本能寺の変の後も生き続け、晩年まで誇り高く日本で暮らしていたというような推測までしている。最近作られた弥助のアニメでも、そういう設定になっているようだ。
 弥助の紹介ドキュメンタリーとしてはそれなりに面白かったが、NHKの歴史ドキュメンタリーにつきもののいい加減さは随所に出てきて、テレビの影響力を考えるともう少し物事を丁寧に扱わなければならないのではないかと思わされる箇所が多い。それに弥助自体ユニークな存在ではあるが、歴史的に大きな影響をもたらしたわけではなく、現在の映像化のブームがなければわざわざ90分番組で取り上げるほどの素材ではないという気もし、その点、製作者側にどこか甘さがあるようにも感じられる。歴史ドキュメンタリーを作るんならもう少ししっかり取り組んだらどうだと毎度ながらNHKには感じてしまうのである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『へうげもの (1)~(39)(アニメ)』

by chikurinken | 2023-01-22 07:53 | ドキュメンタリー
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