ジュラシック・キャッシュ
“恐竜化石オークション”の舞台裏
(2022年・仏Gedeon Programmes他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
遠い世界の、金持ちによるオークションの話
巨大恐竜の化石が美術作品ばりにオークションを通じて高値で取引されている現状をレポートするドキュメンタリー。
巨大恐竜の化石と言えば、一般的には博物館に収蔵され多くの見学者の展覧に供される代物と考えられているが、実際には、美術作品同様、自身で所有したいという金持ちは世界中におり、そういう人々向けにこういった恐竜の化石も取引されている。もちろん小さな化石は比較的簡単にこれまでも購入できていたが、さすがに巨大恐竜となると学術研究のためのものであり、一般人が購入するような代物ではあるまいという思い込みがこちらにはあったが、実際はそうではなかったのである。欲しい人がいればそれを提供する人もいるという具合に需要と供給の関係が成立するというわけだ。
特に近年では、美術作品と同じように大がかりなオークションにかけられるものもあるらしく、このドキュメンタリーではそのあたりのいきさつが詳細に紹介される。ここで紹介されていたのは、「ビッグジョン」と呼ばれるトリケラトプスの化石で、全骨格の70%揃っている(一般的には40%が常識的だという)という逸品。発掘者から20万ドルという価格でこの化石を入手した業者がこれをクリーニングし、骨格を再現する形で組み上げた。次に取引業者がオークションの業者と組んで、これを世界中に公開入札することを公表し、やがてオークションが開催されるという運びになる。取引業者側は取引額がいくらになるか不透明としていたが、実際にはアメリカの富裕層によって500万ドルを超える額で落札された。

で、当然のことながら、化石が美術作品のように高額で取引される現状を苦々しく思っている人々もいて、そういう研究者が登場し、現在のような形態の私有が学術研究の面でマイナスであると語ったりする。だが実際に発掘作業に携わっている研究者からすれば、販路がなければ費用が回収できないというようなジレンマもあるようである。こう行った傾向が良いのか悪いのかの判断はこの作品では視聴者に委ねられているが、少なくとも今後こういった売買が増加するのは間違いなさそうだ……という、そういう主張のドキュメンタリーである。
化石取引の現状がよくわかり、それなりに面白く見ることができたが、実際には自分の世界とはあまりに遠い世界の話であるため、正直フィクションを見ているようなものなのだ。そのため大した感想も出てこず、そんなものなのかと感じた程度なのだった。
★★★☆参考:
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