自民党の統一教会汚染
追跡3000日
鈴木エイト著
小学館
統一教会は世界征服を企む悪の秘密結社である 安倍晋三が怨恨が原因で殺害されてから自民党と統一教会の問題が明るみになり、僕などはそれについてまったく知らなかったため驚くことばかりだった。生長の家との関連は、日本会議関連であちこちの本で指摘されていたが、まさかカルトの日本代表、統一教会とも近いとは悪い冗談にしか思えない。しかもその関係がズブズブで、選挙協力、得票という恩恵を得るために布教の助けをしていたと来ている。金が絡んでいないにしても露骨な利害供与で贈収賄に相当すると言える。
この関係は実は以前から指摘されていたようで、以前紹介した『やや日刊カルト新聞』(
竹林軒出張所『「カルト宗教」取材したらこうだった(本)』を参照)でも告発記事が出ていたようである。実は著者の鈴木エイト氏、あのサイトでも頻繁に記事を提供しており、
『「カルト宗教」取材したらこうだった』にも名前が出てきていたため、僕自身は彼の名前は知っていたのだが、あいにく自民党と統一教会の関係については、きちんと把握できていなかったのだった。
この本は、自民-統一関係を紹介する本で、鈴木エイトがこれまであちこちの媒体(『HBOL』、『やや日刊カルト新聞』など)に書いてきたものを時系列でまとめたものである。安倍晋三殺害事件後、比較的早く出版されたのは、こういったこれまでの蓄積があったためであり、緊急出版されたからといって内容は決して杜撰ではない。取材も丁寧で、かなりマメに取材先に足を運び、当事者に対しても問い合わせの電話やファックスを頻繁に送っている(ほとんどは無視されているが)。記述は新聞記事のように比較的冷静かつ穏やかな論調で、こういう事例があった、→直接取材に行ってこういうことがわかった、→当事者に問い合わせしたが返信はない(あるいは関係を拒否された)という具合に展開される。センセーショナルに書き立てるということはまったくないため、読んでいてそれほどエキサイティングに感じることはない。本当に新聞記事の延長のようである。だが、著者は統一教会にはすでに面割れしており(自身の写真を自ら統一教会に送ったりまでしている)、そのために取材先で拒否されたり恫喝されたりということも起こっている。そのあたりの事情も詳細に描かれている。
この本から窺える自民党議員と統一教会の関係は、単に祝電を送ったとか挨拶したとかいうレベルではなく、一蓮托生と言っても過言ではないものである。特に安倍派や菅・元首相に近い議員たちは、頻繁に統一教会の行事に来賓として出席し、統一教会の総裁にへつらったり信者の勧誘活動を激励したりと忙しく働いていることがわかる。見返りは、先ほども書いたように票と運動員である。
一方、統一教会側の目的は、統一教会の教義を日本(他にもアメリカなど)の国教にすることであり、そのために国会議員や首相を総裁に侍らせているというのが、現在の認識である。世界征服を企む悪の秘密結社と言っても過言ではあるまい。しかも一般人を思想改造して運動員(戦闘員)とし、権力の一旦を握る議員を取り込んでエージェント(怪人)とし、信者(戦闘員)の増加に貢献させている……まさに我々が子ども時代に接した『仮面ライダー』の世界で、悪夢としか言いようがない。『仮面ライダー』のナレーション風に語るならば「鈴木エイトは、世界の平和のために、統一教会と闘うのだ!」ということになる。ちなみに統一教会は現在「世界平和連合」などと名乗っている。世界平和を守るために世界平和連合と闘うという逆説的な現象が起きているわけで、ここまで来ると茶番に映る。なお本書では、このカルト団体の名称については改名前の「統一教会」で通している。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『「山上徹也」とは何者だったのか(本)』竹林軒出張所『妖怪の孫(映画)』竹林軒出張所『「カルト宗教」取材したらこうだった(本)』竹林軒出張所『決定版 マインド・コントロール(本)』竹林軒出張所『カルト宗教信じてました。(本)』竹林軒出張所『カルト宗教やめました。(本)』竹林軒出張所『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話(本)』竹林軒出張所『“宗教2世”を生きる(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『神の子はつぶやく(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カルトの思い出(本)』竹林軒出張所『カルト村で生まれました。(本)』竹林軒出張所『さよなら、カルト村(本)』