もっと頑張れる! アメリカハイスクールのリアル
(2021年・米DEBBIE LUM FILMS他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
アメリカの大学入試事情も
日本とさして変わらなかった
米国カリフォルニア州サンフランシスコにあるローウェル高校の進学事情を追ったドキュメンタリー。
この高校は、アジア系(多くは中国系)アメリカ人が多く在籍する学校で、有名進学校の1つだという。そのため、多くの生徒はスタンフォードやUCLA、UCバークレーなどの名門大学を志願する。ただしスタンフォードは最難関であってローウェルの生徒はあまり取ってもらえないと生徒たちはこぼしている。
アメリカの大学受験生には、GPA(学業成績平均値)とSAT(大学進学適性試験)の2種類の点を持っており、各大学はそれを基にして入学者の選考を行うらしい。スタンフォードは両方が満点でも5人に1人しか通らないと、この学校のある生徒は語っていた。いずれにしても受験生たちは、この2つで高い点を獲得するために日夜テストや特別授業(APというクラスで、大学レベルの物理をやるらしい)の受講などに励む。システムは異なれど、事情は日本とあまり変わらない。
このドキュメンタリーでは、この学校の12年生(日本の高3生に当たる)数人に密着し、受験事情を報告する。先ほども言ったように実情は日本とさして変わらず、ただひたすら受験勉強に励むという状況が描かれる。どことなく(選手の優勝争いを描く)「グレートレースもの」みたいな描き方になっており、この番組でもこの生徒がどこの大学に合格しあの生徒がどこの大学に入ったというような結論になっている。結局のところ、ドキュメンタリーとしてはエンタテイメントに終始してしまった。
面白いのは、中に過保護な教育ママまで出てくることで、アメリカにもこういう親がいるんだとあらためて感心する。また中国系米人が多いせいか知らないが、中国の大学入試事情と似た面もある。このドキュメンタリーを見ると、日本の事情は中国とアメリカの中間ぐらいかと感じるが、いずれにしても何度も繰り返すが、あまり大きな違いはない。かつて日本では、アメリカの入試事情は非常にリベラルで、入りたい大学はどこにでも入れるが卒業するのが難しいなどとまことしやかに語られていたが、あれが欧米崇拝の神話に過ぎないということがこのドキュメンタリーからよくわかる。実際は国は異なれどやはり似たような状況なのであった。そういう点でタイトル通り「アメリカハイスクールのリアル」が垣間見れたわけで、その点は非常に良かった。編集も小気味よく行われており、見せ方も非常にうまいと感じる作品であった。エンタテイメントとしては良いドキュメンタリーである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『密着! 中国受験街(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『中国 教育熱のゆくえ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『中国の小学校で今何が?(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『大学入試担当教員のぶっちゃけ話(本)』竹林軒出張所『史上最悪の英語政策(本)』竹林軒出張所『数学受験術指南(本)』竹林軒出張所『笑うに笑えない大学の惨状(本)』