なぜ仕事がツライのか “燃え尽き症候群”を生むシステム
(2022年・フィンランドYellow Film & TV)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
主張があまり明瞭でなく
やや「大雑把」な印象
労働の現状について分析するドキュメンタリー。
会社勤めの人の中には、それまで熱心に取り組んできた仕事に対して気力が涌かなくなり仕事を続けられなくなる「燃え尽き症候群」が増えている。このドキュメンタリーでは「燃え尽き症候群」の人々を何人か登場させ、彼ら自身の経験を語らせて、彼らの話から現在の労働の問題点をあぶり出そうとする。当然「専門家」も登場し、それぞれの認識の仕方で組織に内在する問題を明らかにしていく。
このドキュメンタリーでは、最大の問題は、現在の組織が人間を阻害するシステムになっていることにあるとする。そのために組織で働く人々が一種の歯車として機能しなければならず、自身の役割さえも把握できなくなるだけでなく、「管理職」という何をやっているかわからない人間から圧力をかけられる、トップの意向で一方的に配置転換や馘首されるなど、過大なストレスに晒されている……それが現在の労働者の状況だという。それがために、一部の労働者がそのしわ寄せを受けて「燃え尽き症候群」で苦しむことになる、というような結論になっているようだ。
ただ全体的に主張が明確でなく、いろいろなエピソードを羅列して紹介するという構成で、何だかわかったようでわからない内容ではある。このあたりデヴィッド・グレーバーの著書(
『ブルシット・ジョブ』など)と共通する特徴であるが、実はこのドキュメンタリーにもグレーバー自身が登場し、ブルシット・ジョブについて語るというシーンがある。もしかしたらグレーバーが製作に関わっているのかとも思ったが、確認はできなかった。
それなりに見どころはあるが、主張があまり明瞭でないドキュメンタリー作品で、イメージ映像などを駆使して体裁は整えているが「大雑把」という印象だけが残った。
★★★参考:
竹林軒出張所『ブルシット・ジョブ(本)』竹林軒出張所『ブルシット・ジョブの謎(本)』竹林軒出張所『ロボットがもたらす“仕事”の未来(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『底辺への競争 ヨーロッパ労働市場の現実(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『(不) 正直な私たち』(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『暴力の人類史(ドキュメンタリー)』