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竹林軒出張所

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『エドガー・アラン・ポー 200年目の疑惑』(ドキュメンタリー)

エドガー・アラン・ポー 200年目の疑惑(2009年・NHK)
NHKプレミアム プレミアムカフェ

ドラマ設定は奇天烈だが
内容はしっかりしている


『エドガー・アラン・ポー 200年目の疑惑』(ドキュメンタリー)_b0189364_19570442.jpg エドガー・アラン・ポーの生涯を探求するドキュメンタリー。全般的にドラマ仕立てになっており、推理作家の江戸川乱歩(石橋蓮司)が、彼の小説のキャラクター、明智小五郎(藤原竜也)にポーの秘密を探し出すよう命じたという(奇天烈な)背景のドラマになっている。
 架空の人物が登場するなど、時代も空間もすべてを超越しているため、終いにはポーの周囲の人々の亡霊にインタビューして、ポーの真の姿をあぶり出そうとするなどという珍妙な設定まで出てくる。そんなことが許されるんだったら、最初からポー自身に直接接触した方が良いんじゃないかと思ったりもする(実際、最後に亡霊のポーが少し登場するが)。
『エドガー・アラン・ポー 200年目の疑惑』(ドキュメンタリー)_b0189364_19570770.jpg ともかく、これまでのエドガー・アラン・ポー像が、実は、ポーと関係が悪かった評論家(ルーファス・グリズウォールド)によって捏造されたものであり、その実像は、広く知れ渡っている「狂気がかったアルコール依存症の姿」とは別のものだ(実際は非常に紳士的な人間で、病気の妻にも献身的だった)というのがこのドキュメンタリーの主張である。そのあたりは大変興味深く、それをいろいろな研究者や、過去の記録などから読み解こうとするアプローチもよくできている。ドラマ仕立てにした珍妙な見せ方も、おそらく過去の記録を、その人物の亡霊の口を借りて語らせたかったという背景があったのではないかと想像する。
 ドラマは設定がかなり異様ではあったが、全体的には割合よくまとめられていて、違和感はまったくなかった。演出も非常に手堅く、構成の破綻はまったくない。どことなく『京都人の密かな愉しみ』を思い起こさせるような演出だと思ったら、案の定、演出と脚本は源孝志が担当していた。内容的にも(僕にとって)意外なポー像が提示されていて、見どころが多かったと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『黒猫/モルグ街の殺人(本)』
竹林軒出張所『アッシャー家の末裔(映画)』
竹林軒出張所『京都人の密かな愉しみ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『漱石悶々(ドラマ)』
竹林軒出張所『いねむり先生(ドラマ)』
竹林軒出張所『スローな武士にしてくれ(ドラマ)』

by chikurinken | 2022-11-06 07:56 | ドキュメンタリー
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