沈黙の意味を模索して 修道院の10日間
(2022年・英Firecracker Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
英国の修道院は日本の尼寺に似ていた
「学校から戦地まで、様々な場所に潜入してルポするイギリスの人気番組」というものがあるらしく、その中の1本がこのドキュメンタリー作品ということになるようだ(『BS世界のドキュメンタリー』のホームページの情報によるが、未確認)。このドキュメンタリーでは、ステーシー・ドゥーリーという「体験型ジャーナリスト」(この肩書きもよくわからないが)が、英国国教会のセント・ヒルダという修道院に10日間入所して修道院の生活を追体験し、あわせて修道女たちに生活や価値観、意識などについてインタビューする。
修道院と言われると、薄暗い古い建物の中で修道女がひっそりと暮らしているイメージを想像してしまうが、ここで登場する修道院はモダンな建物で、敷地もかなり広い。ちょっと見、私立学校とか、地方のコミュニティセンターみたいなふうにも映る。修道女たちも、厳格でストイックという見た目ではなく、普通の穏やかな人々という印象である。そもそもどの修道女も普通の女性として娑婆の世界で生活していたんだが、それぞれの事情で修道院に入ることになったらしいのだ。修道院の生活は、静かに日常生活を淡々と送っていくというもので、決まった時刻に祈りなどの儀式がある他は、料理や内職(修道院の収益を得るため)などで過ごす。生活費用は修道院持ちであるため、収入を得るためにあくせくする必要もなく、ゆったりと毎日を過ごしている。一方でボランティア活動なども積極的に行っているようである。
ステーシーは、最初こそ少し戸惑っているが、徐々に生活にも慣れ、修道女の皆さんとも打ち解けて、信仰を含むいろいろな話をする。元々信仰心があまりないと語る彼女だったが、彼女たちの信仰心に少しずつ理解を示していくようになる。同時に、あまりに慌ただしい普段の生活を反省する機会も得ることになる。こうして10日間の体験は終わり、修道院を後にするという形で番組は終わる。
この番組で紹介される修道院だが、NHKでときどき放送されている
『やまと尼寺精進日記』に登場する日本の尼寺に似た穏やかさと明るさがあって、洋の東西、宗教を問わず、女性だけの宗教施設は似たような雰囲気になるのだなと感じた。僕自身は、修道院に持つイメージが大きく変わり、そういう意味では番組の意図は達成されていたのではないかと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『汚れなき悪戯(映画)』竹林軒出張所『ココ・シャネル(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『何も求めず ただ座るだけ(ドキュメンタリー)』