ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『あなたの健康データは大丈夫か』(ドキュメンタリー)

あなたの健康データは大丈夫か
GAFAの果てなき欲望
(2021年・仏Artline Films/ARTE rance)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

巨大な欲望があらゆるものに触手を伸ばす

『あなたの健康データは大丈夫か』(ドキュメンタリー)_b0189364_09084012.jpg GAFAなどの多国籍IT企業が、医療業界をターゲットにして、利権を得るべく少しずつ迫ってきている現状を告発するドキュメンタリー。
 医療業界は、経済規模が1兆ドルを超える巨大市場であることから、大企業にとってきわめておいしい産業である。特に情報産業にとっては、ビッグデータの活用という点で大きなアドバンテージがあることから、医療は非常に魅力的に映るようである。そういうこともあって、彼らは、さまざまな患者データにも触手を伸ばしている。彼らの言い分は、ビッグデータをさらに拡大させそれを活用することによって医療を劇的に変革するというものである。実際、すでに病院や医療機器企業を買収している多国籍企業もあり、大企業による医療業界の寡占がもう始まっていると考えることもできる。
 もちろん、医療情報は究極の個人情報であり、それを自由に提供することに危惧が生じるのは当然である。情報企業側は、個人情報の厳正な管理について明言しているようだが、彼らの言動が信用できないのは、これまでの彼らの活動から明らかである。
 このドキュメンタリーによると、英国とフランスには国が所有する膨大な患者データがあり、それも彼らのターゲットになっている(手に入れようと目論んでいる)ということであるが、英国とフランスはそれを彼らに譲り渡すことを拒否したという(フランスは、彼らの提案を退け、自前で医療データ活用システムを構築したらしい)。こういったせめぎ合いが大企業と行政や病院の間で進んでいるために、安易に彼らの言い分を信用することなく、今後も監視していく必要があるというのがこのドキュメンタリーの主張である。
 あらゆる分野が大企業(あるいは私人)の欲によって奪い取られて台無しにされ、公共のものが犠牲になっている現状が世界中にあり、医療も例外でないということがこのドキュメンタリーからわかる。ボーッとしていると、何もかも収奪されてしまい、庶民がゴミのように捨てられてしまう時代が迫っているようにさえ感じられる。巨大な欲望が世界をあらぬ方向に融かしてしまうのも近いのではないかと、このドキュメンタリーを見ていて感じたのだった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『シッコ(映画)』
竹林軒出張所『成人病の真実(本)』
竹林軒出張所『健康診断は受けてはいけない(本)』
竹林軒出張所『コロナパンデミックは、本当か?(本)』
竹林軒出張所『みんなのための資本論(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マネー資本主義第4回(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『インサイド・ジョブ(映画)』
竹林軒出張所『ウォール街の“アンタッチャブル”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『あなたの顔は大丈夫?(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『中国 デジタル統治の内側で(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『Mine!(本)』

by chikurinken | 2022-08-28 09:08 | ドキュメンタリー
<< 『沈黙の意味を模索して』(ドキ... 『アウシュビッツに潜入した男』... >>