ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『夢見た国で 技能実習生が見たニッポン』(ドキュメンタリー)

夢見た国で 技能実習生が見たニッポン
(2022年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

「技能実習制度」という美名の下での
奴隷労働システム


『夢見た国で 技能実習生が見たニッポン』(ドキュメンタリー)_b0189364_08425079.jpg 現在の日本には「技能実習」という制度があって、「技能実習」という名目で外国人を下働きの労働者として受け入れている。「技能実習」と言っても結局のところ、人手不足の分野に単純作業の外国人労働者を入れて、最低賃金を下回る低賃金で働かせるという、姑息なシステムである。しかも簡単に職場を移転できない、離職できず、場合によってはハラスメントが平然と行われているという、現代ニッポンの奴隷労働がそこに存在する。
 その上、奴隷労働が行われていることは行政もマスコミも把握していながら、現代ニッポンの底辺労働を支える必要悪と考えているのかどうだか知らないが、その悪辣な実態は放置されている。そういうわけで「技能実習」という話を聞くと、僕自身はかなり憂鬱な気分になるのである。しかもこの制度が30年近くも存続しているというんだから恐れ入る。
 だが時代は移り変わり、ネット社会になったこともあって、こういう現状は「実習生」の母国にも少しずつ知れ渡るようになり、素朴に日本に憧れてやって来るという人たちも少しずつ減っているらしい。日本の経済力が低下していることもその一因という。魅力度ランキングが番組の最後に出ていたが、アジアの中でもかなり低い方になっていた。騙されて連れてこられる人たち(多くはベトナム人)が減ると良いなと思う。
 さて、このドキュメンタリーは、そういった「技能実習」の実態を描こうとするもので、数人の「技能実習生」からその現状を聞くというものである。ただでさえ過酷な状況に追い込まれていた「実習生」たちが、コロナ禍のために失職し、生活が破綻して、悪辣な高利貸し(「半グレ」と紹介されていた)の犠牲になっている状況が紹介される。当然のように行政はこれに対して何ら手を打つことはなく、あげくに被害者が拡大し、犯罪に走る人々が出てくる。行政の担当者が出てきて、相変わらず他人事のような物言いをして責任回避の言動に終始していたが、自集団の責任回避のためにしか存在しないような役職なら不要です(そういう仕事を「ブルシット・ジョブ」というのだ)。言い訳以外何も生み出さないこういう人間が、底辺でいろいろなものを生産している人間を虐げているのが現代日本の姿である。日本人には恥の概念もなくなってしまったのかと思う。同時に、凋落する経済に気が付かず、「ニッポンすごい」のような言動で浮かれている愚か者ばかり増えてしまうと、謙虚さという概念までなくなってしまったのかと思う。
 ニッポン国に夢や希望を求めてやって来ている「実習生」の皆さんは、ぜひ真実を知った上で、無謀な冒険を控えていただくよう、切に希望する。今のニッポン国には希望などないのですよ、と言いたくなる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ジャパニーズ・ドリーム(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『傭兵たち(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『メイド地獄(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『底辺への競争 ヨーロッパ労働市場の現実(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『北朝鮮 外貨獲得部隊(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アメリカ“刑務所産業”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『聖職のゆくえ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2022-08-19 07:42 | ドキュメンタリー
<< 『密着!中国受験街』(ドキュメ... 『おひとりさま 笑って生きて、... >>