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竹林軒出張所

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『ニワトリと卵と、息子の思春期』(本)

ニワトリと卵と、息子の思春期
繁延あづさ著
婦人之友社

読後感は爽やかでなかった

『ニワトリと卵と、息子の思春期』(本)_b0189364_18043925.jpg 『山と獣と肉と皮』の繁延あづさの著書で、オリジナルは雑誌『婦人之友』の連載である。
 長崎の高台に住んでいる著者一家だが、長男がニワトリを飼いたいと言い出し、計画書まで作成して周囲を説得して、実際に養鶏を始める、さらには卵の販売まで行うようになるという、その過程を描く。
 養鶏レポートであると同時に、長男が自己を主張し、親とぶつかり合う過程も描かれる。養鶏を積極的にどんどん進めていくあたりはなかなか痛快だが、時折出てくる長男の自己主張がかなりのわがままに映り、少し不快さを感じる。もちろん「もっとも」と思わせるものもあるが、親を困らせるために家出を繰り返したりするのはやや幼児的で、仕事を辞めた父親に対して「稼ぐのが親の義務だ」などと主張するのも自己中心的に映る(著者はこれを、ユングのいわゆる「父親殺し」、「母親殺し」であると肯定的に捉えているようだが)。著者自身もそのあたりに戸惑いを感じているから、そこを強調しているんだろうが、あまりに自己中心的な人間になってしまわないか気がかりになる。
 そういう意味で、読後感はあまり爽やかなものではない。親子関係の問題が不快な澱を残すようで、養鶏の過程のエキサイティングさを帳消しにしている。もちろん、テーマの中心は親子関係なんだろうが、何とも言えない不快感が最後に残ったのも事実である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『山と獣と肉と皮(本)』
竹林軒出張所『食について思いを馳せる本』
竹林軒出張所『罠師 片桐邦雄・ジビエの極意(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『牛を屠る(本)』
竹林軒出張所『Love MEATender(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『いのちの食べかた(映画)』
竹林軒出張所『ありあまるごちそう(映画)』

by chikurinken | 2022-07-18 07:04 |
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