カルト宗教やめました。
「エホバの証人2世」の私が信仰を捨てた後の物語
たもさん著
彩図社
やめてもつらいカルト宗教 『カルト宗教信じてました。』の続編。本書では、前著で「エホバの証人」に疑問を持ち脱会した著者夫婦が、脱会後に経験するあれやこれやを描く。前著がかなり売れたために企画されたものであるが、内容はそれなりに面白く、マンガもよく描けているため、続編としては及第点で、決して「二匹目のどじょう」というようなレベルではない。
主人公が、エホバの活動をしている人々(「兄弟」、「姉妹」と呼ばれる)を見かけると、動転して逃げ出すとか、戻ってこいという勧誘がしきりに来るとか、あるいは活動をしていた頃の夢を見るとか、おそらく特定の組織を離れた人にとっての「あるある」なんだろうが、そういう部分が描かれているのもポイントが高い。エホバの信者にとっては、神社や葬儀に行くことさえ敷居が高いということも、このマンガを通じて追体験できる。高校時代の同級生(エホバの活動をしていた)が修学旅行のときに東大寺に入らなかったことをあらためて思い出した。ちなみに著者は、このマンガの中では、どちらもクリアして(つまり神社仏閣の敷地内に入ってお参りしたということ)、さらにはその段階から宗教のあり方にまで考えを馳せている。結果的に、宗教は必然性があって生まれたものであり、「国土を持たないユダヤ人にとって自分たちの誇りを守るために唯一神と選民思想は必要だったんだと思う」(それがユダヤ教→キリスト教の必然性だった)と思考を巡らせていき、悟りに近い境地に到達している。要は、宗教というものはそれぞれの地域の人々によって必然性から生み出されたものであり、それを他人に強いることはできないし、それによって生活が縛られることもあってはならない、他人の宗教を排撃するのもおかしいと結論付けるのである。このあたりの考察はなかなか鋭い。
ただ、いまだに著者の母と夫の母がエホバ信者であることを考えると、今後著者の周辺に不幸なことが発生したりしたら、「信仰を捨てたせいだ」というような残酷な言われ方をするんだろうなと思う(信者にはこういったデリカシーの欠如が見られる。思考停止しているから)。そのときこそが、元信者である著者にとって本当の正念場になり、真の「めざめ」のときになるんじゃないかと思う。著者との間に面識はまったくないが、一読者として、著者には良い人生を送ってほしいと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『カルト宗教信じてました。(本)』竹林軒出張所『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話(本)』竹林軒出張所『“宗教2世”を生きる(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『神の子はつぶやく(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カルトの思い出(本)』竹林軒出張所『カルト村で生まれました。(本)』竹林軒出張所『さよなら、カルト村(本)』竹林軒出張所『酔うと化け物になる父がつらい(本)』