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竹林軒出張所

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『たんぼ物語』(ドキュメンタリー)

たんぼ物語
限界集落で究極の酒造りを! 秋田鵜養

(2022年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集

『夏子の酒』を地で行く話

『たんぼ物語』(ドキュメンタリー)_b0189364_08051503.jpg 秋田県の山間部にある鵜養(うやしない)地区は、田んぼが広がる農村だが、若者たちが街に出ていったために後継者が少なく、このままでは消滅してしまうことが危惧される限界集落である。全国の限界集落の典型と言っても良い。
 そこに降って湧いたのが無農薬米栽培の話で、この話を持ち込んだのは秋田の酒蔵、新政(あらまさ)酒造。無農薬米を作ってくれたら買い取って酒にしたいと社長が申し出たのである。
 無農薬米は手間がかかる上、方法もこれまでと違うために、地元の農民は実現不可能として二の足を踏んだため、実験的に新政の社員がこの地に乗り込んで、無農薬米栽培に取り組むことになった。うまく行けば、他の農家もこれから参加してくれるのではないかという腹である。ちなみにこの社員は杜氏であり、なんで俺がこんなことやらなきゃいけないのと感じながらも熱心に取り組む。
 途中、田んぼを貸した農家の機嫌を損ねたりはするが、支援者たちも少しずつ集まり、無事に無農薬米栽培に成功する。翌年からは参加する農家が出てきて、農村再生に一歩踏み出したという、そういうドキュメンタリーである。元々、新政の社長としては、農村再生が大きな目的だったようで、それが実現する方向に進んだわけである。
 ドキュメンタリーではあるが、いろいろとドラマチックな要素もあって、これをそのままテレビドラマ化しても十分面白いというエピソードである。実際、かつてフジテレビ系列で放送されたドラマ、『夏子の酒』がかなり似た話で、この鵜養の話もリアル夏子の世界と言って良さそうである。いろいろと問題もありはしたが(実は出火騒ぎなどもあったのだ)、現時点でハッピーエンドで終わっているのもなかなか良い。これからおそらくいろいろな問題が出たり、あるいは大きな展開が出てきたりすることが考えられるため、NHKにはぜひ、定点観測的にこの地区に迫っていってほしいと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夏子の酒 (1)~(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『ヴィニュロンの妻(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カンパイ! 世界が恋する日本酒(映画)』
竹林軒出張所『田んぼ×未来(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2022-06-29 07:04 | ドキュメンタリー
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