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竹林軒出張所

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『世界サブカルチャー史 1』(ドキュメンタリー)

世界サブカルチャー史 欲望の系譜
アメリカ 理想の50s

(2022年・NHK)
NHK-BSプレミアム

どのあたりを目指しているのかが見えてこない

『世界サブカルチャー史 1』(ドキュメンタリー)_b0189364_15045707.jpg 「世界サブカルチャー史」というタイトルだが、アメリカの社会の様子しか出てこない。映画などのサブカルチャーを通じて、50年代を繙こうという企画のようである。映像は、映画に限らずいろいろなところから集めてまとめたもので、そういう点では資料的な価値は高いが、どのあたりがこの番組のテーマなのか、ちょっと見えてこない。
 第二次大戦が終わり、好景気に涌くアメリカでは、アメリカ型の大量消費文化が生み出され、それが世界に発信されていく。結果的に世界中の憧れの存在になったアメリカは、我が世を謳歌しているように対外的には映るが、一方でソ連からの攻撃に怯え、国内では赤狩りが席巻していくという暗い現状があった。
 社会的には男が働き女が家を守るというモデルが理想とされるようになり、映画でもそういう理想像が描かれていく。現実とは離れたところで理想像が描かれるというのが実態だったようだが、その後ベビーブーマーが成長するにつれ、絵に描いた理想像と現実とのギャップが少しずつ明るみに出てきて、そういう状況が当時の映画にも反映してきたのだというような、そういう描き方を、このドキュメンタリーではしている。
 要は、このような、50年代前半の保守的な男中心の世界でもてはやされたのがマリリン・モンロー(『紳士は金髪がお好き』など)、後半の象徴的な存在が、ティーンエイジャーの反抗の象徴として現れたジェームズ・ディーンである(『理由なき反抗』)という解釈である。それを裏付けるように、アメリカのジャーナリストや研究者のインタビューが登場して、こういった時代の解釈が試みられるのである。
 全体的にそれなりに興味深くはあるんだが、先ほども書いたように、どのあたりを目指しているのかがちょっとわからず、少しモヤモヤする。確かに映画は時代を反映しているということは言えるだろうが、映画を通じて社会を読み解けると考えるのは少々強引に過ぎるような印象もある。
 このシリーズは、この後、アメリカの2010年代まで続くようで、その後、『フランス 興亡の60s』という回が予定されているようである。「フランス」が出てくることで、ようやく「世界サブカルチャー史」の看板が(一定程度)満たされることになるわけだが、実際のところは「アメリカサブカルチャー史」じゃないのと思ってしまう。
★★★

参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえるアメリカ 3、4、5(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『再びカラーでよみがえるアメリカ 1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(1)~(4)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(5)~(7)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チャップリン対FBI(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“マリリン”を生きる(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『マリリン・モンロー 最後の告白 前編、後編(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ローマの休日(映画)』
竹林軒出張所『招かれざる客(映画)』

by chikurinken | 2022-05-30 07:03 | ドキュメンタリー
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