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竹林軒出張所

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『ゴルバチョフ 老政治家の“遺言”』(ドキュメンタリー)

ゴルバチョフ 老政治家の“遺言”
(2020年・ラトビアStudio Vertov、チェコHypermarket Film)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

英雄はただの老人になってしまった

『ゴルバチョフ 老政治家の“遺言”』(ドキュメンタリー)_b0189364_08442419.jpg 1980年代末から90年代にかけ、ソビエト連邦内で改革を成し遂げ、結果的にソビエト連邦を崩壊させてしまった元書記長、ミハイル・ゴルバチョフに話を聞くドキュメンタリー。
 かつて世界史を大きく動かすことになったゴルバチョフも、現在90歳を超え、一人暮らしをしている。もちろん政治の最前線からは退いており、現在は書き物をしたりして暮らしているという。住まいは、かつての友人でその後有力になった政治家たちが与えてくれたものということで、割合豪華な暮らしをしている。ただし死んだら明け渡すことになっているらしい(本人が皮肉な表情を浮かべて語っていた)。以前、反ロシア的な記事だか本だかで、ゴルバチョフは貧しいアパートで年金生活というような記述があったが、あれがまったくのデタラメであったことがわかる。
 一方で、20年前に愛妻のライザを失い、それ以降、精力がなくなったようで、ほとんど隠居生活になってしまったことが窺われる。ライザに自分の生活や活動の多くを依存していたようである。
 このドキュメンタリーでは、ゴルバチョフ本人から、生い立ちやライザとの出会い、政治家だったときの話などが語られるが、政治についての話はあまりない。プーチンのことは話の中に出てきた(何かの式典で会ったが少し会話を交わしただけでどこかに行ってしまったらしい。プーチンの方から避けられていると感じたようだ)が、ロシアの政策などについては、このドキュメンタリーの中では一切語っていなかった。居住環境も悪くなく、料理人や家政を担当している人々もいて、それほどみじめな生活ではないが、それほど幸福という感じもない(本人は今の生活に満足していると語っていたが)。孤独の中で生きる老人というイメージである。孫たちもライザが死んでからあまり来なくなったと語っていた。なんとなく、妻に先立たれた日本の男性老人と共通するような話である。
 外出して友人と大晦日を過ごす風景も撮影されていたが、本当に一人暮らしのお年寄りという姿以上のものがなく、見ているこちらとしては少し寂しささえ感じる。風貌も若い頃のようなエネルギッシュな様子はなく、こちらも少々寂しい。あれだけの英雄が、後は天寿を全うするだけの抜け殻のような姿になっているのを見るのはつらいもので、せめて世界の政治情勢について自分の(独断的な)意見を披露するようなエネルギッシュな姿を見せてほしかったと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『ゴルバチョフの警告(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史(8)~(10)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしのペレストロイカ(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2022-05-25 07:43 | ドキュメンタリー
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