以前から懐かしい品物をオークションなどで探し出し、しきりに買っている(そして懐かしさに浸っている)のだが、最近は、かつて小中学で使った教科書にまで、その矛先が向かってきた。中学校の英語の教科書については先般手に入れたこともあり、最近は、小学校の国語の教科書の方にその興味が向いている。
小学校の国語教材についてはそれなりに記憶があり、たまに「セイロンのカルナナンダ」とか「アムンゼンとスコット」とか「ビバ、フランス!」だとかいう文言が頭の中に浮かぶんだが、どれも小学校の国語の教科書に載っていた教材から来ているものだ。ちなみに「セイロンのカルナナンダ」は、東京オリンピックの1万メートル走のエピソード、「アムンゼンとスコット」は、南極点到達競争、「ビバ、フランス!」は、領土がドイツに割譲されることでフランス語が使えなくなってしまうフランスの一地方の学校を舞台にした小説の一節である。小学校の国語は、僕にとっては退屈で嫌いな授業の部類に入っていたが、こうして振り返って見ると意外に憶えているもんである。

そういうことで少し懐かしくなり、例によってネット検索してみると(「セイロン カルナナンダ」で検索してみた)、件の教科書が光村図書のものだということがわかった。同時にカルナナンダ選手の孫が現在、群馬県で介護士をしているという情報もわかったが、それはまた別の話。しかも光村図書のサイトに
『教科書クロニクル』というページがあって、そこで、かつての教科書の内容(目次程度だが)を確認できると来ている。この情報によると、「セイロンのカルナナンダ」は4年生の「ゼッケン67」、「アムンゼンとスコット」は6年生の「極点の旗」、「ビバ、フランス!(正確には"Vive la France!")」も同じく6年生の「最後の授業」(ドーデの小説『最後の授業』が出典)が基になっていることがわかる。
で、この教科書をもう一度見てみたいと思うんだが、なかなか手にすることができない。ヤフオクやメルカリに出ることがあれば、入手の可能性を探るわけだが、あまり出ることがない。一つには教科書は世代によって異なり、たとえ教科書が出品されていても、それが同世代のドンピシャになるということが少ないためである。これは学習雑誌(小学館のものや学研のもの)などにも当てはまり、まったく同じ世代の人が出品していない限り、目にすることはまずない。教科書会社に元版があるんなら、ぜひ(PDFなどの)データとして公開してもらいたいものだが、そういう話もあまり聞かない。リストを出している光村図書なんてまだ良心的な方だ。それに光村図書は、一部の教材については、アンソロジーとして集めて出しており(
『光村ライブラリー』)、それは先ほどのサイトからリンクがあるため確認できるんだが、それでも収録されているものは、執筆者がはっきりしている童話がほとんどで、執筆者名が載っていないオリジナル教材については、ほとんど収録されたものがない。先の例で言えば、「ゼッケン67」と「極点の旗」は読むことができないわけだ。
こういうものは、当時の子どもたちの共通体験であり、(その後成長した)今の大人たちにとっても共有財産である。それに、以前は「ゼッケン67」がサイトで公開されていたようだし、教科書で儲けたんだから、せめてその利益を少しでも社会に還元してはどうかと思うが。これは他の科目の教科書でも同様。わざわざ英語の教科書をオークションで高い値で買ったりしたくないんだ、こっちは(教科書であるせいか書き込みが多い上、汚いものが多い)。各教科書会社はそのあたり、よーく考えておくように。
参考:
竹林軒出張所『光村ライブラリー6、10、14(本)』竹林軒出張所『間違いだらけの教科書選び』竹林軒出張所『英語教科書回顧 昭和版 vs 令和版』
「セイロンの選手だ!」「カルナナンダだ!」