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竹林軒出張所

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『ウイルス学者の責任』(本)

ウイルス学者の責任
宮沢孝幸著
PHP新書

コロナの話題より冤罪の話題の方が目を引いた

『ウイルス学者の責任』(本)_b0189364_08420519.jpg 『京大 おどろきのウイルス学講義』の宮沢孝幸の著書。
 タイトルが示すとおり、「ウイルス学者の責任」が一貫したテーマで、ウイルス学者が社会に対してどのように貢献できるかというのが本書を通じて語られる。第1章と第2章が新型コロナ対策・ワクチンに対する批判、第3章が動物用ワクチンにレトロウイルスが混入していた事件(著者が告発したもの)に関する記述、第4章が今市事件(著者が裁判で証人として鑑定し被疑者の無罪を立証したが無期懲役の判決を受けた事件)についての記述、第5章が研究者・研究室責任者の責任、第6章が自身の研究者としての歩みについての記述という内容である。いろいろと多角的に書かれているが、本書で実際に目玉になっているのは第1章と第2章ということになるだろう。新型コロナの話題は今日的であるし、政府のコロナ対策、コロナワクチンの問題性に気付いている人も多いようだし、そのあたりをターゲットにして出版された本と見て良さそうである。
 ただ、本書でもっとも面白かったのは、個人的には第4章で、第1章と第2章にはそれほど目新しさを感じなかった。あえて目新しさを感じた項目を上げるとすれば、ウイルスの感染はウイルスの量が重要な要素になる(接触するウイルス量が少なければ感染しにくい)という主張で、これが正しければ、新型コロナウイルスが空気感染するにしても、飛沫を防止するという意味でマスクが感染予防上有効という主張は頷けるところである。
 本書も前著もPHP新書から出ており、この著者を二度も起用したPHPについては、コロナ騒ぎ便乗みたいな印象も受ける(実際よく売れているらしい)が、とは言え、コロナ騒ぎみたいなことでもなければ、なかなかウイルス学者の声に耳を傾ける機会もなかっただろうし、それなりに面白い話も含まれているため、この本はこれでヨシとすべきであると思う。それに誤植がほとんどないのも大手出版社ならではで、そういう点では、他のコロナ便乗本と一線を画すると言えなくもない。
★★★

参考:
竹林軒出張所『京大 おどろきのウイルス学講義(本)』
竹林軒出張所『コロナワクチン失敗の本質(本)』
竹林軒出張所『新型コロナワクチン 誰も言えなかった真実(本)』

by chikurinken | 2022-04-15 07:41 |
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