スポーツ界 性的虐待の闇
(2020年・仏Arte France/Yuzu Production)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
スポーツ界はセクハラの温床
スポーツ界にはびこるセクハラ問題を取り上げるドキュメンタリー。
スポーツの世界は、指導者(監督やコーチ)の力が絶大であること、周辺環境が密室になりやすいことなどから、ともすれば性的虐待の温床になりやすい。
このドキュメンタリーでは、イングランドのサッカー選手(ポール・スチュアート:元イングランド代表選手)や、スペインの女子体操の元代表選手(グロリア・ビセラス)が、自身が受けた性的虐待の経験を告白し、その経験が彼らの人生にもたらした暗い影までも紹介する。
彼らの話をまとめると、指導者に従わなければチームから排除される恐れがあるなど、選手側が著しく不利な立場にあることから、ひどい目にあってもそれを告発することができにくいということなのである。しかも、問題が発覚しても、それぞれのスポーツを管轄する組織(競技団体やIOC)までが、それに対して処罰を含む対策を施さず、それどころか加害者の側に立つ組織(たとえばアメリカ水泳連盟など)まで存在するという実情がある。
同様の事例は、どこの国にも存在するわけで、特に日本の場合、学校スポーツが盛んであり、絶大な権力を持つ指導者(監督や教師)も存在するため、セクハラ問題が多発していると考えられる(
竹林軒出張所『スクールセクハラ(本)』を参照)。指導者の権力の絶大さについては、日本のスポーツ界にパワハラが横行しているのを見ても容易に察せられる。こういった問題は、このような異常な現状があることを告発して、同時に風通しをよくするところから始めなければならないのは、いじめ問題と同様である。そういう点で、こういうドキュメンタリーが作られたのは非常に有意義で、ぜひとも日本版も作ってほしいところである。もっとも日本の場合、パワハラやセクハラを容認する異常な空気があるため、一部から反発を招くかも知れないが。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『スクールセクハラ(本)』竹林軒出張所『盗撮・児童ポルノの闇(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ブラックボックス(本)』竹林軒出張所『未成年の性被害(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ハリウッド発 #MeToo(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『説教したがる男たち(本)』竹林軒出張所『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い(本)』竹林軒出張所『私のいない部屋(本)』