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竹林軒出張所

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『日本以外全部沈没』(映画)

日本以外全部沈没
(2006年・『日本以外全部沈没』製作委員会)
監督:河崎実
原作:筒井康隆
脚本:河崎実、右田昌万
出演:小橋賢児、柏原収史、デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ、ブレイク・クロフォード、キラ・ライチェブスカヤ、村野武範、藤岡弘、、寺田農

あまりにくだらない
映画にしない方が良かったと思う


『日本以外全部沈没』(映画)_b0189364_10590280.jpg 『日本沈没』が小説として発表された頃に、筒井康隆が(おそらく)テキトーに書いたパロディ小説を映画化した作品。
 パロディ短編小説として読む分にはなかなか面白い素材だと思うが、こうやって1本の長編映画にしてしまうと、くだらなさが目に付く上、(70年代ならいざ知らず今の時代感覚からいくと)差別的な表現が多く、見ていてあまり良い気持ちがしない。
 まずアメリカ大陸が突然沈み、他の大陸も次々と沈んで、ほぼ日本列島しかなくなった世界が舞台。各国の要人や有名人が日本に亡命してきて(数十億人単位の犠牲者が出ている模様)、日本で排除されないよう媚びを売ったり、あるいは下層階級として底辺を生きているみたいな状態になる。日本の人口が4億人になったせいで食べ物も少なくなったという設定だが、登場する日本人はほとんど従来と同じ生活をしており、亡命外国人だけが苦境に陥っているというような、ご都合主義的な展開になっている。
 70年代は、日本人に欧米人コンプレックスがあり、その裏返しの世界が原作で描かれたんだと思うが、今見ると単なるコンプレックスの裏返しの鬱憤晴らしにしか思えず、むしろそういう鬱憤晴らしが憐れささえ誘う。70年代にこの作を読んだりしていれば、あるいは面白いと感じたかもしれないが、今見るとまったく笑えない。
 そもそも超B級映画であるわけで、そんなにどうこう言うべきではないのかも知れないが、それにしてもくだらなすぎる。映画版とテレビ版の『日本沈没』の主人公、藤岡弘と村野武範が出ていたり、筒井康隆本人が出てきたり、あるいはスピルバーグのそっくりさん(「ルージ・ジョーカス」という名前)とかシュワルツェネッガーのそっくりさん(あまり似ていないが)、あるいはデーブ・スペクター(本人)まで出てきたりして、笑えるネタはあるが、笑えるのは小ネタばかりで、肝心の物語の方はさっぱりである。この映画を見たところで、話のネタにはなるかも知れないが、話のネタにしかならないという類のB級作品、それがこれである。話のネタが特に欲しい人以外は、見ない方が良いと思う。
★★

参考:
竹林軒出張所『日本沈没(映画)』
竹林軒出張所『日本沈没 (74年版) (1)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日本沈没 (74年版) (5)〜(14)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日本沈没 –希望のひと– (1)〜(5)(ドラマ)』
竹林軒出張所『筒井康隆讀本(本)』

by chikurinken | 2022-01-26 07:58 | 映画
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